2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15590005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤井 周司 大阪大学, 薬学研究科, 助手 (60192457)
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Keywords | リパーゼ / エトキシビニルエステル / ドミノ型反応 / ラセミ化 / 動的光学分割 / ニトロン / アルカロイド / 不斉全合成 |
Research Abstract |
近年、環境調和型反応としての期待から、天然の加水分解酵素リパーゼを利用する有機合成反応の開発研究が盛んに行われている。しかしその利用法は、カルボン酸類やアルコールの光学分割による光学活性化合物の調製に限られていた。我々は最近、反応活性部位を備えた新アシル化剤エトキシビニルエステルを調製し、それを用いてラセミ体アルコールの光学分割を行うと、本反応で導入されたアシル基部分が続いて分子内Diels-Alder反応を起こし、一挙に多環式化合物を与えるドミノ型不斉合成反応を開発した。さらに、昨年度、光学分割で残存する光学活性アルコールを反応系中でラセミ化するルテニウム錯体を見出し、動的光学分割を伴うドミノ型反応の開発に初めて成功した。本年度は、計画に従い、本ドミノ型合成法の拡張を検討して以下の成果を得た。 (1)ドミノ型不斉合成法の概念を数種の鎖状、および環状のラセミ体α-ヒドロキシニトロン類に適用した。反応条件検討の結果、不斉エステル化と分子内双極子環化付加反応を連続的に進行させることに成功し、イソキサゾリジン環を含む多環式化合物を単一のジアステレオマーとして、高光学純度(>90%ee)で合成できた。さらに、一部のα-ヒドロキシニトロン類は、ルテニウム錯体無しでも酵素反応条件下にラセミ化することを見出し、動的光学分割を伴うドミノ型反応を開発した。本法を応用し、天然のアルカロイド、ロスマリネシンを市販のラセミ体原料から短工程で触媒的に不斉全合成することに初めて成功した。 (2)前年度開発したラセミ化を促進するルテニウム錯体の改良検討を行い、錯体のベンゼンリガンドの置換基の構造が触媒活性に大きく影響することを見出した。
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