2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15590010
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
新藤 充 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教授 (40226345)
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Keywords | イノラート / オレフィン化 / 二次軌道相互作用 / torquoselectivity / 電子環状反応 / ケトン / エステル / エノールエーテル |
Research Abstract |
イノラートはケトンと反応するとβ-ラクトンエノラートを生成し、この中間体は-20度以上で開環し四置換オレフィン(α、β-不飽和カルボキシラート)を与えることを既に見出している。本反応について、前年度に引き続き精査した。 (1)アリールアルキルケトン、アリールアリールケトン、アルキルアルキルケトンのオレフィン化 アリールアルキルケトンではE体、アリールアリールケトンでは電子過剰なアリール基がカルボキシル基に対してトランスの配置、アルキルアルキルケトンでは、例えばピナコロンではZ体が優先した。いずれも高収率で四置換オレフィンを与えた。特に従来法(WITTIG反応など)では反応が進行しなかった立体障害の大きい基質でも良好な収率で所望の生成物を与えた。 (2)アシルシランのオレフィン化 前年度に引き続き各種アシルシランを基質に検討したが、ほとんどの基質で完壁なZ選択性が発揮された。 (3)エステルのオレフィン化 エステルはケトンに比べ求電子性に著しく劣るため、古典的なオレフィン化では困難であった。イノラートはエステルとも-20度以上で速やかに反応し、四置換オレフィンを良好な収率で与えた。立体選択性は脂肪族エステルではE体のみ、芳香族エステルでも高いE選択性が得られた。生成物はエノールエーテルでもあり、有機合成での有用性が高い。 これらのオレフィン化反応の立体化学はβ-ラクトンエノラートの開環(電子環状反応)時のtoruquoselectivityにより決定される。これは遷移状態での軌道相互作用が重要であり、理論計算によりその二次軌道相互作用を検討したところ、π軌道やC-Hσ軌道はoutwardに回転するとき切断されるC-O結合のσ*軌道を安定化し、一方、C-Si、C-O、C-Cσ*軌道は切断されるC-Oσ軌道を安定化しinwardに回転することが明らかとなった。 本オレフィン化反応は一般性が高く立体化学(選択性)が理論的に予測可能な有用な方法である。
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