2003 Fiscal Year Annual Research Report
膜蛋白質の膜間移行機構の解明とこれを利用した人工膜ワクチン調製方法の確立
Project/Area Number |
15590039
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
上野 雅晴 富山医科薬科大学, 薬学部, 教授 (40080197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 正夫 (株)構造機能研究所, 代表取締役(研究職)
林 京子 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (60110623)
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Keywords | 人工膜ワクチン / インフルエンザウイルス / CV-1細胞 / リポソーム / 膜蛋白質 / 膜間移行 / 抗体産生能 / MDP誘導体 |
Research Abstract |
膜蛋白質の膜間移行を利用してインフルエンザ人工膜ワクチンの調製を試みた。サル腎由来CV-1細胞にインフルエンザウィルスを感染させ、細胞膜表面に突出するインフルエンザ抗原蛋白質HA,NAを人工膜上に移行させた。移行の機構として2つのルートを仮定して検討した。第1は細胞と人工膜の接触時の直接移行、第2は膜蛋白質がバッファー中に放出した後人工膜に移行するルートである。結果HA,NA蛋白は両ルートで移行した。量比は第1のルートはで第2のルートの約3倍であった。また第2のルートでは全く移行しない蛋白もあった。おそらく細胞膜内在性の疎水性の高い蛋白だと考えられる。HA,NA蛋白は膜を一回貫通しているが大きな部分は膜から突出しているスパイク蛋白であり、両ルートにおける移行が可能であったと解釈できる。またこのような蛋白は他の膜蛋白よりも優先的に人工膜へ移行することが判明した。このようにして調製したプロテオリポソームは、電子顕微鏡観測より、HA,NA蛋白を表面に突出させたインフルエンザウイルスそのものと酷似した表面構造を示し、ワクチンとしての有用性が期待された。次にこの人工膜ワクチンをマウスに接種し、抗体産生能を評価した。同じ蛋白量で規格化した人工膜ワクチンと不活化ウイルスの抗体産生能を比較すると、接種1週間後では人工膜ワクチンでは不活化ウイルスの約1/2であったが、3週間後移行では不活化ウイルスに匹敵する高い抗体産生能を示した。さらに3種類のMDP誘導体についてアジュバント効果を検討した。3種類のうち、B30-MDPが最も高いアジュバント効果を示した。また、MDP誘導体は人工膜ワクチンに対して非常に高いアジュバント効果を示し、その結果人工膜ワクチンは同じ量の蛋白を含む不活化ウイルスよりも高い抗体産生能を示した。これらの成果の一部は「第25回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム」(平成15年11月、金沢)ですでに報告した。また「日本薬学会第124年会」(平成16年3月、大阪)、「PDM国際シンポジウム」(平成16年4月、Lyon)で発表予定である。
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