2003 Fiscal Year Annual Research Report
環境応答性高分子を用いた生体機能解析のための新規分離システムの開発
Project/Area Number |
15590049
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Research Institution | Kyoritsu University of Pharmacy |
Principal Investigator |
金澤 秀子 共立薬科大学, 薬学部, 助教授 (10240996)
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Keywords | ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド / 温度応答性クロマトグラフィー / 機能性高分子 / 高機能表面 / HPLC / 充填剤 / 環境応答性 |
Research Abstract |
環境変化を認識し応答する機能性高分子を分離に応用することにより、外部刺激に応答して試料との相互作用を変化させ分離選択性を制御する全く新しい概念の分離システムの開発を行っている。これまでに温度応答性高分子を用いた温度応答性クロマトグラフィーを実現した。温度により分離担体表面の性質を制御し、水のみの移動相でステロイドなど医薬品やタンパク、DNAなどの生体高分子を含む複雑な系における分析が可能であった。本年度の研究成果を以下に述べる。 温度グラジエントによる経口避妊薬の分析 経口避妊薬の成分である黄体ホルモンと卵胞ホルモンを水100%移動相により分離を達成した。疎水性度の大きく異なるこのような成分を分析する際、一般的な逆相カラムでは溶媒グラジエント法を用いる必要があるが、本システムでは固定相表面の温度応答性が早いことからLC分析において新しい手法となる温度グラジエント法を用いて良好な分離を達成した。温度グラジエント法は、リニア・ステップ法など目的に合わせて使い分けることが可能であり、溶媒グラジエント法に欠かせないグラジエント用ポンプ、経験による移動相の組成の決定など必要とせず、恒温槽の設定を行う簡単な機械操作で行え、コスト・環境問題の面からもメリットがある。 チトクロームP450プローブ薬と代謝物の分離^*(国内外で特許出願中) 薬物代謝の表現型解析を行うにあたり重要とされるチトクロームP450各分子種のプローブの薬物を、本システムを用いて簡便な条件の下で一斉分析を達成した。臨床現場において血中濃度測定にはイムノアッセイ法が主に用いられるが、代謝物や複数薬物の同時分析は行えない。一方、一般的な逆相系HPLCでこれらの医薬品とその代謝物の同時分析を行うと、移動相に大量の有機溶媒を用いる必要があるが、本システムでは、このような分析を水100%移動相のみで達成した。また、製薬企業での薬物代謝能評価に用いられているプローブ薬物の生体試料中の一斉分析も可能であった。このことから、臨床現場で分析の経験が少ない人でも簡単に使用できる薬物代謝能の評価法として有用であり、ゲノム情報に基づく患者個人の代謝能解析への応用が期待される。
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[Publications] C.Sakamoto, Y.Okada, H.Kanazawa, E.Ayano, T.Nishimura, M.Ando, A.Kikuchi, T.Okano: "Temperature- and pH-responnsive aminopropylsilica ion-exchange columns grafted with copolymers of N-isopropylacrylamide."J.Chromatography A. 1030. 247-253 (2004)
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[Publications] Hideko Kanazawa: "Temperature-responsive polymers for liquid phase separations"Analytical and Bioanalytical Chemistry. 378. 46-48 (2004)
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[Publications] 坂本千賀子, 岡田裕司, 金澤秀子, 菊池明彦, 岡野光夫: "温度応答性クロマトグラフィーによるカテキン類の分離"分析化学. 52(10). 903-906 (2003)
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[Publications] 金澤秀子: "機能性高分子を用いた温度応答性クロマトグラフィーによるタンパク分離"Hitachi Scientific Instrument News. 46. 7-11 (2004)