2003 Fiscal Year Annual Research Report
活性型ビタミンDを分子基盤とした癌細胞転移・浸潤抑制機構の解明と治療薬の開発研究
Project/Area Number |
15590083
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
岡野 登志夫 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (20131542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 公恵 神戸薬科大学, 薬学部, 助手 (90309435)
須原 義智 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (30297171)
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Keywords | 活性型ビタミンD誘導体 / ビタミンD受容体 / 構造活性相関 / ビタミンD代謝酵素 / 3位水素基異性化反応 / アポトーシス / 増殖・分化 / 転移・浸潤 |
Research Abstract |
活性型ビタミンDは、前骨髄性白血病細胞、乳癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌など様々な癌細胞に対して増殖抑制、分化誘導、アポトーシス誘導などの抗腫瘍活性を示す。また疫学調査研究においては、癌の発症率とビタミンD摂取量との間に高い負の相関性が認められている。しかし、活性型ビタミンDおよびその誘導体を癌治療薬および予防薬として応用するためには、癌細胞転移・浸潤抑制機構を明らかにするとともに、作用の選択性(正常細胞と腫瘍細胞)や副作用(高カルシウム血症)の低減化などの面も解決すべき重要な課題である。我々は、活性型ビタミンDを基盤とする癌治療薬を開発することを目的に、癌細胞に対する転移・浸潤抑制機構の解明と治療薬としての安全性を主眼とした副作用に拘る問題点を解決するために本研究を開始した。平成15年度は、活性型ビタミンD誘導体を癌治療薬として用いる際の副作用(特に高カルシウム血症)軽減化にかかわる構造モチーフの探索を目標に、カルシウム作用の弱いアナログである22-oxacalcitriolの代謝と代謝物の生理活性検索を中心に細胞および動物・ヒトレベルでの実験を行った。研究成果は以下の通りである。 1)22-oxacalcitriolは、主に側鎖の脱水反応またはA環3位水酸基の異性化反応により不活化される。 2)側鎖脱水反応および3位異性化反応の両代謝系に関与する酵素は、これまでに発見されているビタミンD代謝酵素とは異なる。 3)上記2つの代謝系を相互に調節するメカニズムが存在する。 4)ビタミンD誘導体の代謝酵素に種特異性が認められる。したがって、動物の結果をそのままヒトへ外挿することはできない。このためには、既知のビタミンD代謝酵素(ヒトおよびラット)を発現する大腸菌発現系が非常に有効な活性スクリーニング法となることを確認した。 また、In vivoにおける腫瘍形成抑制作用については、Green fluorescent protein(GFP)導入Lewis lung carcinoma細胞((LLC-GFP)を用いて細胞移入による腫瘍形成評価モデルを構築し、活性型ビタミンD誘導体投与により腫瘍形成が有意に抑制される結果を得ている。現在その抑制のメカニズムを癌細胞浸潤・転移に関連する遺伝子発現の点から解析を進めているところである。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] M.Kamao: "Two Novel Metabolic Pathways of 22-Oxacalcitriol (OCT),C-25 Dehydration and C-3 Epimerization and Biological Activities of Novel OCT Metabolites"J.Biol.Chem.. 278(3). 1463-1471 (2003)
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[Publications] K.Nishimura: "Long-term Hospitalization During Pregnancy is a Risk Factor for Vitamin D Deficiency in Neonates"J.Bone Miner.Metab.. 21(2). 103-108 (2003)
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[Publications] T.Sakaki: "Metabolism of 26,26,26,27,27,27-F6-1α,25-dihydroxyvitamin D_3 by CYP24:Species-based Difference between Human and Rats"Biochem.Pharmacol.. 65(12). 1957-1965 (2003)
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[Publications] Y.Mizushina: "Selective Inhibition of Mammalian DNA Polymerase α by Vitamin D_2 and D_3"J.Pharmacol. Sci.. 92. 283-290 (2003)
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[Publications] M.Kamao: "Novel Metabolic Pathway of Vitamin D_3-Identification of C-3 Epimerization and C-25 Dehydration Pathway and Biological Activity of Novel Metabolites"J.Health Sci.. 49(4). 260-266 (2003)
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[Publications] 中川 公恵, 岡野 登志夫: "生化学75(9)「ビタミンD作用の分離を目指した誘導体の開発」"日本生化学会. 1233-1238 (2003)
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[Publications] 岡野 登志夫: "メディカル朝日(10)7「日本人高齢女性の血中ビタミンD代謝物および副甲状腺ホルモン濃度と骨粗鬆症」"朝日書店. 78-81 (2003)
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[Publications] 岡野 登志夫: "CLINICAL CALCIUM 13(7)「日本人のビタミンDとカルシウムの所要量及び食事摂取基準」"医薬ジャーナル社. 36-41 (2003)
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[Publications] 岡野 登志夫: "CLINICAL CALCIUM 13(7)「日本人のビタミンDとカルシウムの摂取状況」"医薬ジャーナル社. 42-51 (2003)