2003 Fiscal Year Annual Research Report
食細胞の走化性運動におけるコフィリン・LIMキナーゼ系の役割
Project/Area Number |
15590090
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
鈴木 和博 国立医薬品食品衛生研究所, 代謝生化学部, 室長 (10154527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 玲子 国立医薬品食品衛生研究所, 主任研究官 (10291113)
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Keywords | HL-60細胞 / 白血球 / 走化性 / コフィリン / リン酸化 / LIMキナーゼ / IL-8 |
Research Abstract |
【目的】コフィリンは、分子量19kDaのアクチン結合蛋白で、酵母や粘菌から哺乳度物細胞のあらゆる組織まで極めて普遍的に存在する。F-アクチンの切断・脱重合の活性をもつが、リン酸化されるとその活性はなくなる。最近、リン酸化を担う特異的酵素としてLIMキナーゼが、脱リン酸化を担う特異酵素としてSlingshotが同定された。我々は、刺激を受けた白血球においてコフィリンは、脱リン酸化、再リン酸化の制御を受け、活性酸素の産生や異物の貪食に深く関与することを明らかにしてきた。しかし、白血球の重要な機能の一つである走化性については、コフィリンがどのように関与するか不明である。そこで、本研究では白血球(好中球)の走化性運動におけるコフィリンの役割について検討した。 【方法】ヒト培養未分化白血球HL-60細胞を、ジメチルスルホキシドおよび顆粒球コロニー刺激因子存在下に6日間培養して、好中球様に誘導し使用した。走化性因子としては、インターロイキン8(IL-8)使用し、走化性アッセイは96穴チャンバーで行った。IL-8受容体の発現はフローサイトメトリで、リン酸化コフィリンは特異抗体を使用したウェスタンブロッティングで解析した。コフィリンのリン酸化部位と細胞膜透過性配列を結合させたS3-Rペプチドを調製し、好中球様HL-60細胞を30分前処理して影響を検討した。細胞内におけるコフィリンおよびF-アクチンの分布は、特異抗体を使用した間接蛍光抗体法および蛍光標識ファロイジンで染色した細胞を、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察した。 【結果】IL-8の受容体は、未分化のHL-60細胞にはほとんど存在しないが、好中球様に分化させると顕著に発現し、0.1〜1.0nMのIL-8により顕著な走化性を示した。好中球様HL-60細胞をInMのIL-8で刺激すると、コフィリンは30秒で一過性に脱リン酸化された後、再リン酸化された。S3-Rペプチドで処理した細胞はコフィリンの再リン酸化が阻害され、かつ走化性が抑制された。また、IL-8刺激により細胞は変形し、コフィリンおよびF-actinはその変形した細胞膜直下に共局在するのが観察された。 【結論】白血球がIL-8に対して走化性運動を起こす場合、コフィリンはリン酸化・脱リン酸化の制御を受け、細胞膜直下でF-アクチン形成を調節することにより、重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Watanabe, H., Adachi, R., Hirayama, A., Kasahara, T., Suzuki, K: "Triphenyltin enhances the neutrophilic differentiation of promyelocytic HL-60"Biochem.Biophys.Res.Commun.. 306. 26-31 (2003)
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[Publications] Watanabe, H., Adachi, R., Kusui, K., Hirayama, A., Kasahara, T., Suzuki, K: "Bisphenol A significantly enhances the neutrohilic differentiation of promyelocytic HL-60 cells"Int.Immunopharmacol.. 3. 1601-1608 (2003)
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[Publications] 安達玲子, 鈴木和博: "食細胞の機能発現とLIMキナーゼ-コフィリンによるアクチン細胞骨格制御"生化学. 75. 1238-1243 (2003)
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[Publications] Oshizawa, T., Yamaguchi, T., Suzuki, K., Yamamoto, Y., Hayakawa, T: "Possible Involvement of Optimally Phosphorylated L-Plastin in Activation of Superoxide-Generating"J.Biochem.. 134. 827-834 (2003)
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[Publications] Wada, H., Matsumoto, N., Maenaka, K., Suzuki, K., Yamamoto, K: "Two HLA-E Mutants Segregate the Inhibitory NK Receptor CD94/NKG2A and the Activating Receptor CD94/NKG2C bind the top of HLA-E through mostly shared but partly distinct sets of HLA-E residues"Euro.J.Immunol.. 34. 81-90 (2004)
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[Publications] Tajima, K., Matsumoto, N., Ohmori, K., Wada, H., Ito, M., Suzuki, K., Yamamoto, K.: "Augmentation of NK cell-mediated cytotoxicity to tumor cells by inhibitory NK cell receptor blockers"Int.Immunol.. 16. 385-393 (2004)
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[Publications] Kusui, K., Sasaki, H., Adachi, R., Matsui, S., Yamamoto, K., Yamaguchi, T., Kasahara, T., Suzuki, K.: "Ribosomal protein S18 identified as a cofilin-binding protein by using phage display library"Mol.Cell.Biochem.. 2004(印刷中).