2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内レドックス状態が及ぼす免疫機能への影響と酸化的ストレス影響評価系への応用
Project/Area Number |
15590118
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
上野 仁 摂南大学, 薬学部, 助教授 (20176621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 智史 摂南大学, 薬学部, 助手 (30288972)
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Keywords | 活性酸素 / レドックス / 免疫攪乱 / アポトーシス / ROI / carboxy-DCFH-DA / 過酸化水素 / フローサイトメトリー |
Research Abstract |
免疫担当細胞における酸化的ストレス防御系および活性酸素種(ROI)産生レベルのバランスに基づいた細胞内レドックス状態と細胞応答機能との関連性を解明するとともに、環境化学物質などの外因性酸化的ストレスによる免疫撹乱影響評価系を確立する目的で、本年度は外因性酸化的ストレスに対する免疫担当細胞の反応性について解析した。 まず、免疫担当細胞内のレドックス状態を知るための有効な指標を確立するため、ヒトT細胞白血病Jurkat細胞を用い、緩和な酸化的ストレスとして1〜50μmol/L H_2O_2曝露で産生する細胞内ROIについて非特異的蛍光検出試薬であるcarboxy-DCFH-DAを用いたマイクロプレート法によって検討した結果、バックグラウンドが高くて有意なROI産生が検出されなかった。そこで、細胞内蛍光のみを特異的に検出可能なフローサイトメトリー法に換え、2種類の細胞株を用いて検討した結果、Jurkat細胞においてはROI産生が認められなかったが、ヒト前骨髄球白血病HL-60細胞を用いた場合はH_2O_2濃度依存的にROI産生が認められ、しかも曝露時間の延長によってROI産生量も増大した。そのため、同じ酸化的ストレスを与えても細胞系の違いによってROI産生量に違いがあることが判明した。また、細胞内ROIの検出効率の向上を期待して、carboxy-DCFH-DAと構造が類似したDCFH-DA、NO検出試薬であるDAF-2DA、・OHやONOO^-とのみ反応するHPFおよびAPFなどの特異的ROI検出試薬で検討した結果、いずれもH_2O_2濃度依存的なROI産生が検出されなかった。一方、HL-60細胞ではH_2O_2曝露によって細胞生存率が低下することが認められた。これは、annexin V-FITC assayおよびヘキスト33258染色下蛍光顕微鏡観察によってアポトーシス誘導に起因するものであった。 以上の結果から、ヒトT細胞系白血病Jurkat細胞とヒト前骨髄球白血病HL-60細胞ではH_2O_2による酸化的ストレスに対する感受性が異なるとともに、後者では比較的緩和な酸化的ストレス曝露によってcarboxy-DCFH-DAフローサイトメトリー法でアポトーシス誘導と関連した細胞内ROI産生が認められることから、本法が細胞内のレドックス状態を知るための有効な指標となる可能性が示唆された。
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