2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15590119
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
西村 哲治 国立医薬品食品衛生研究所, 環境衛生化学部第三室, 室長 (20156110)
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Keywords | 環境汚染化学物質 / 温度応答性ポリマー / 分化 / 分化指標タンパク質 / 好中球未分化細胞 / 分化誘導阻害 / CD18遺伝子産物 |
Research Abstract |
比較検討した4種の温度応答性ポリマーの中で、N-イソプロピルアクリルアミド(分子量:10,000)が、タンパク質の結合量および結合能が最も高いことが明らかとなった。細胞溶解液中のタンパク質を結合させた温度応答性ポリマーは、下限臨界溶解温度以上である40℃で白濁非溶解状態にした後、12,000rpm、15分の遠心により回収した。この沈殿を4℃にすることで、温度応答性ポリマーを溶解状態に戻し、対象とするタンパク質を効率よく濃縮回収することができることが明らかとなった。 ヒト白血病由来細胞HL60株の好中球への分化を示す指標タンパク質であるCD18について、環境汚染物質51種を、4日間の暴露後の細胞致死率が約20%となる比較的低濃度における濃度で、10ng/mlヒトG-CSFおよび2.5%ジメチルスルホキシドにより分化誘導を開始してから継続的に暴露し、発現誘導に及ぼす影響を比較検討した。ベンゾ[a]ピレンなど数物質の暴露により発現誘導量の低下が認められたが、ビスフェノールA、4-tert-オクチルフェノール、17β-エストラジオール、ハロアセトニトリルや有機リン系農薬のオキソン体など多種多用な環境汚染物質により誘導量が増加することを明らかにした。これらの環境汚染物質による発現誘導亢進は、免疫系の応答亢進作用を示唆する結果と考えられる。内分泌系に影響を及ぼす物質も、免疫系の一環である好中球への分化に影響を及ばす可能性を示すことができた。また、有機リン系農薬のオキソン体の多くが発現誘導の亢進を示したことは、酸化ストレスを及ぼす物質も好中球への分化に影響を及ぼす可能性を示すことができた。実際の生活環境中では複数の化学物質による暴露の可能性があり、低濃度の環境汚染化学物質の暴露が免疫系の分化や機能亢進に影響を及ぼしていることを示唆する結果を得ることができた。
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