2003 Fiscal Year Annual Research Report
術後色素沈着症および老人性色素斑の治療を目的としたトレチノイン水性ゲル軟膏の開発
Project/Area Number |
15590124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青山 隆夫 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60262028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 浩太郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60210762)
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Keywords | トレチノイン / 水性ゲル / 色素沈着症 / シロクデキストリン / 包接化合物 |
Research Abstract |
院内製剤のトレチノイン(RA)水性ゲルとヒドロキノン乳酸プラスチベースの併用療法は色素沈着症の色素消失に従来の方法に比べて、劇的な効果を示すことが我々の今までの検討から明らかとなっている。しかしながら、RAは安定性が非常に悪く、RA水性ゲルの調製後の使用期間を1ヵ月に設定し、頻回の調製を強いられている。また、製薬会社による製造も困難となっている。そこで、RA水性ゲル中のRAの安定性を高めることを目的として、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)によるRAの包接化合物を調製し、RAの安定化を試みた。 混練法によりRA : HP-β-CD複合体を調製した。包接化の確認はX線解析、DSC、IR測定により行った。RAとHP-β-CDのモル比は1:1または1:2とした。RA : HP-β-CD複合体に水性ゲルの各成分を加えてからゲル化する方法(Method1)とRA:HP-β-CD複合体にエマルゲン408加えて混和してから水性ゲルを加える方法(Method2)により軟膏を調製し、安定性を評価した。水性ゲル中のRAの定量は開発したHPLC-UV法により行った。 RA : HP-β-CD複合体のXRDはRA特有の結晶構造が消失し、DSC曲線は、RAおよびHP-β-CDの各々に由来する吸収ピークは見られず、213℃に新たな吸収ピークが観察された。さらにRA : HP-β-CD複合体におけるIRスペクトルはRAの二重結合に由来する1600cm-1にシフトした。これらのことから、RA : HP-β-CD複合体は包接化合物を形成している可能性が示された。水性ゲル中のRAの残存率は、従来ほRA水性ゲルに比して、2ヵ月後でMethod1のモル比1:2の軟膏で増加が見られ、安定性が改善されたことが示された。 以上のことから、RAとHP-β-CDとの包接化合物形成によりRA水性ゲル中の安定性が向上するものと考えられた。
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