2004 Fiscal Year Annual Research Report
洞結節細胞システムの熱力学的モデル構築とその分岐ダイナミクスの非線形力学的解析
Project/Area Number |
15590195
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Research Institution | KANAZAWA MEDICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
倉田 康孝 金沢医科大学, 医学部, 助教授 (00267725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝本 利重 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90178921)
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Keywords | 洞結節細胞 / イオンチャネル / イオントランスポーター / 非線形力学系モデル / 定常マルコフ状態モデル / 絶対反応速度論 / コンピュータ・シミュレーション / 分岐解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、我々が作成したHodgkin-Huxley型(HH型)ウサギ洞結節細胞モデル(Kurata et al., Am J Physiol 283,H2074-H2101,2002)をベースに、イオンチャネル・トランスポーターによるイオン輸送機構の熱力学的(絶対反応速度論的)記述からなる新しい洞結節モデルを作成し、モデルシステムの分岐構造(自動能消失過程におけるダイナミクス)を非線形力学系の分岐理論に基づいて比較解析することである。昨年度は、イオンチャネルの定常マルコフ状態モデルを基に、その絶対反応速度論的定式化を行って新しい熱力学的モデルを作成し、実験データ再現性と各イオン電流抑制時の分岐構造を比較検証した。HH型モデルの分岐構造に関しては既に報告済みである(Am J Physiol 285,H2804-H2819,2003)。本年度の目標は、さらに完成度の高い熱力学的モデル(トランスポーターの定常マルコフ状態モデルを組み込んだもの)を構築するとともに、イオンチャネル阻害薬の状態依存性結合・解離動態を記述する拡張モデルを作成し、薬物投与におけるモデル細胞の分岐構造を比較解析すること、また、洞結節細胞の分岐構造に関する理論的予測と新しいモデルの有用性を実験的(電気生理学的)に検証することであった。トランスポーター(Na^+-K^+ポンプ、Na^+-Ca^<2+>交換体)の定常マルコフ状態モデルを組み込んだ(より完成度の高い)熱力学的モデル、さらにはイオンチャネル阻害薬の結合・解離動態をも組み込んだ拡張モデルを作成することができた。この新しいモデルと従来のHH型モデルとの比較検討により、1)単一イオンチャネル電流データの再現性においては新しいモデルの方が優っているが、自発性活動電位・イオン電流動態の再現性は同等であること、2)L型Ca^<2+>チャネル・遅延整流K^+チャネル電流抑制時(イオンチャネル阻害薬投与時)のモデル細胞ダイナミクス・分岐構造も本質的(定性的)に同じであること、が明らかとなった。また、HH型モデルの分岐構造が、はるかに複雑(大規模)かつ精巧な非線形力学系モデルの分岐構造とほぼ同等であったことから、心臓モデル構築用モジュールとしてのHH型心筋細胞モデルの有用性が証明された。
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