2005 Fiscal Year Annual Research Report
肝再生における細胞増殖・分化に及ぼすヘム代謝の影響
Project/Area Number |
15590252
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
赤木 玲子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教授 (50150967)
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Keywords | 再生肝 / ヘム代謝 / ヘムオキシゲナーゼ / 血管形成 |
Research Abstract |
本研究において、マウスの部分肝切除後、門脈周辺に活発な血管新生が起こっていること、ヘム分解系律速酵素Heme oxygenase(HO)の誘導型アイソザイムであるHO-1が転写レベルで誘導されていることを明らかにした。血管形成は肝再生に不可欠であり、HO-1発現の血管新生への関与が報告されているので、肝再生時のHO-1誘導と血管形成との関係について培養細胞を用いて検討した。再生肝では骨髄由来の幹細胞の定着と増殖、血管内皮細胞への分化が重要である可能性が示唆されている。そこで、マウス胚性幹(ES)細胞をヘミン(50〜100μM)存在下に培養し、血管内皮細胞のマーカーである血小板由来接着因子(CD31)とHO-1の特異的抗体を用いて共焦点顕微鏡で観察したところ、培養初期ではHO-1の広範な分布に一致したCD31発現細胞が認められた。この効果は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と同等以上であった。この結果から、HO-1誘導のES細胞の血管内皮細胞への分化促進効果が示唆された。次に、血管形成の過程で血管内皮細胞の増殖、遊走、管腔・毛細血管網形成の各段階を、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いて検討した。VEGFはこれらの実験系でいずれの段階に対しても促進的効果を示したのに対し、ヘミン添加によるHO-1誘導は増殖、遊走においてはVEGFと同等に促進したが、CD31の発現には影響を与えず、細胞増殖を有意に促進する濃度のヘミンは管腔・毛細血管網形成に対してはむしろ抑制的に働いた。本研究結果からHO-1誘導は幹細胞の血管内皮細胞への分化・増殖を促し、管腔・毛細血管網形成の準備に関与すると考えられる。肝再生初期にHO-1が一過性に誘導されることと、やや遅れてVEGFが発現することを考えあわせると、血管形成において各々が異なった役割を果たしている可能性が示唆された。
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