2004 Fiscal Year Annual Research Report
H.Pylori Cag Aによる細胞内SHP-2活性の異常増加と細胞増殖制御の撹乱
Project/Area Number |
15590264
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
東 秀明 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (20311227)
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Keywords | 癌 / SHP-2 / シグナル伝達 / 感染症 / ヘリコバクター・ピロリ |
Research Abstract |
ピロリ菌病原因子CagAタンパク質は、感染成立後ピロリ菌から宿主細胞内に注入されチロシンリン酸化を受ける。申請者はこれまでに、CagAが細胞内SHP-2活性を亢進することで増殖因子刺激様の影響を細胞に与えることを報告した。 本研究では、CagAにより修飾されるSHP-2介在性シグナル伝達系の解明を目的とした。 ・CagA-SHP-2複合体により修飾される下流シグナル伝達系の探索を行った。CagAを発現しているAGS細胞において、細胞接着に深く関わるチロシンキナーゼFAKのチロシンリン酸化レベルが低下していた。変異型SHP-2およびFAK分子を用いた解析から、SHP-2はFAKを基質分子として直接認識し、FAK活性化に必要であるリン酸化チロシンを脱リン酸化することでFAK活性化を抑制していた。また、優性陰性型FAKにより内因性FAK活性を抑制したところ、CagAにより誘導される細胞形態と酷似した細胞形態が誘導された。このことから、CagAはSHP-2活性化を介してFAK活性を抑制することにより、細胞形態変化を誘導していることが示唆された。 ・CagA発現に伴った遺伝子発現の経時的変化をDNAチップ法で解析した。その結果、CagA発現に伴い複数の遺伝子において発現量の変化が認められた。これら遺伝子のプロモーター領域配列から予想される共通の転写因子について、レポーターアッセイ等による解析を行った。その結果、CagA生物活性がある特定の転写因子の転写活性を増加させ、細胞内遺伝子発現プロファイルに影響を及ぼしていることを見出した。 ・胃上皮におけるCagAの発癌作用およびその発症機構を解明するため、cagAトランスジェニックマウスの作成が進行中である。既に複数のファウンダートランスジェニックマウスを得ており、現在CagAを強く発現している系統を確立するためのスクリーニングを進めている。
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