2004 Fiscal Year Annual Research Report
悪性骨軟部腫瘍における細胞周期制御遺伝子および蛋白発現の研究
Project/Area Number |
15590304
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小田 義直 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (70291515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田宮 貞史 九州大学, 医学部・保健学科, 助教授 (60284486)
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Keywords | 細胞周期制御遺伝子 / 細胞周期制御蛋白 / Rb遺伝子 / LOH解析 / p16遺伝子 / 遺伝子メチル化 / 粘液型脂肪肉腫 / 脱分化型脂肪肉腫 |
Research Abstract |
脱分化型脂肪肉腫: 脱分化型脂肪肉腫は分化型脂肪肉腫の成分を背景に非脂肪性の高悪性度未分化な肉腫成分、いわゆる脱分化成分が出現する脂肪肉腫の一亜型である。脱分化の現象が起こる分子生物学的なメカニズムは明らかでない。RB蛋白は脂肪細胞の分化、増殖に関与する蛋白のひとつとされている。我々はこのRB蛋白に着目し、蛋白をコードするRB1遺伝子の遺伝子変異(essential promotor regionとprotein-binding pocket domeinであるexon20から24まで)、プロモーター領域のメチル化、LOHを解析し、免疫染色でRB蛋白発現を検索した。27例の脱分化型脂肪肉腫において脱分化成分と分化型脂肪肉腫の成分を別々に解析し、対象として11例の悪性線維性組織球腫および11例の分化型脂肪肉腫の解析結果と比較した。脱分化成分でのRB1のLOHは60%に、RB蛋白発現減弱も66.7%に認められたのに対し、分化型脂肪肉腫成分ではLOHは12.5%、蛋白発現減弱は33.3%と、脱分化成分でのRBの異常の頻度が明らかに高かった。また脱分化成分で遺伝子変異は18.5%に、メチル化は15%に認めたが、分化型脂肪肉腫の成分ではこれらの異常を全くみとめなかった。以上より脱分化型脂肪肉腫における脱分化の現象にはなんらかのRB1遺伝子異常が関与している可能性が示唆された。 粘液型/円形細胞型脂肪肉腫: 粘液型/円形細胞型脂肪肉腫において円形細胞成分の広範な出現が予後不良の指標とされているが、円形細胞出現による悪性化の分子病理学的なメカニズムは明らかにされていない。我々は90例の粘液型/円形細胞型脂肪肉腫における粘液型成分81標本と円形細胞成分29標本におけるp53,MDM2,p14,p16蛋白発現を免疫染色で評価し、また増殖能の指標としてMIB-1の染色も行い、各成分での発現を比較した。さらに各成分におけるp53遺伝子変異、MDM2遺伝子増幅、p14およびp16遺伝子の遺伝子変異、homozygous deletion、プロモーターのメチル化を解析し、両成分で比較した。円形細胞成分においてp53蛋白過剰発現、p14およびp16蛋白発現減弱は粘液型成分に比較して高頻度に認められた。円形細胞成分のMIB-1標識率は粘液型成分のそれに比較して有為に高値であった。p14のメチル化はp14蛋白減弱と相関し、蛋白発現減弱の主な機序はプロモーターのメチル化によるものと思われた。p14のメチル化はp53蛋白過剰発現とも相関していた。単変量解析では、円形細胞の出現、MIB-1標準率高値、p14蛋白発現減弱、p53遺伝子変異が予後不良因子であり、多変量解析では、円形細胞の出現、MIB-1標識率高値、p53遺伝子変異が予後不良因子であった。以上の結果より粘液型/円形細胞型脂肪肉腫の悪性化および進展にはp14/p53の異常が関与している可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)