Research Abstract |
API2-MALT1キメラ遺伝子は,低悪性度B細胞性リンパ腫のひとつであるMALTリンパ腫に特異的な遺伝子異常である.われわれが開発したMultiplex RT-PCR法を用いて,胃MALTリンパ腫を検討し、API2一MALT1キメラ遺伝子の持つ臨床病理学的意義を明らかにした。胃MALTリンパ腫は時に多臓器浸潤をきたすが,それらの特徴は明らかではない.多臓器浸潤を示す胃MALTリンパ腫は,API2-MALT1キメラ遺伝子を有するものが多く,また除菌治療に抵抗性であった(Iwano M, Inagaki H, et al.J Gastroenterol 2004).約70%の胃MALTリンパ腫はピロリ菌に対する除菌治療により寛解を示すが,治療反応群,抵抗群の特徴は明らかではない.除菌反応性およびキメラ遺伝子の有無から胃MALTリンパ腫を解析したところ,A群,除菌反応性・キメラ遺伝子陽性;B群,除菌抵抗性・キメラ遺伝子陰性;C群,除菌抵抗性・キメラ遺伝子陽性の3群に分類された.そして,それぞれの群は異なった特徴を有していた.除菌反応性を多変量解析にて予測したところ,キメラ遺伝子陰性が最も重要な予測因子であった(Inagaki H, et al.Am J surg Pathol, 2004).p16/INK4a遺伝子メチル化は多くのリンパ腫で腫瘍進展に関与すると考えられている.高頻度にキメラ遺伝子が検出されるMALTリンパ腫を用いてp16遺伝子メチル化を検索したところ,約60%の症例にp16遺伝子メチル化が認められた.しかし,キメラ遺伝子の有無や臨床病理学的にリンパ腫進展との関連は明らかではなかった.この結果から,肺MALTリンパ腫におけるp16遺伝子メチル化は腫瘍発生の早期事象と考えられた(Takino H, Inagaki H, et al.Mod Pathol in press).HIV陰性,キメラ遺伝子陰性の若年男子に発生した肺MALTリンパ腫の1例を報告した(Okamoto M, Inagaki H, et al.Leuk Lymphoma, 2004).
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