2003 Fiscal Year Annual Research Report
腸管出血性大腸菌の培養不能状態への移行に関与する分子機構の解析
Project/Area Number |
15590391
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
水之江 義充 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (20157514)
|
Keywords | 培養不能菌 / 腸管出血性大腸菌 / 蘇生 / 酸化ストレス / 抗酸化剤 |
Research Abstract |
Koch以来100年以上に渡って培養可能であると言うことが細菌が生きていることの定義であった。しかし近年生きているが培養できない(VBNC)状態の細菌の存在が報告されるようになった。VBNCとは、通常の培養条件では増殖が認められないものの、菌体が何らかの生物活性を維持している状態を示す。腸管出血性大腸菌をはじめとする食中毒の感染源の特定がしばしば困難であるのも原因菌がVBNC状態に陥っているためと考えられる。VBNC状態の菌が本当に生きているか、或いは病原性を有しているかは、感染症の予防や感染源の特定に当たって極めて重要な問題である。我々は、VBNC状態となった腸管出血性大腸菌O157、腸炎ビブリオ、コレラ菌の菌液を、過酸化水素を分解する種々の物質や抗酸化剤を含む寒天培地(蘇生培地)上に播種し蘇生されるかどうかを検討し非常に良好な結果を得た。更に上記の方法で腸管出血性大腸菌に感染した患者より分離された数10株を調べた結果、VBNC状態に移行しやすく蘇生可能な菌株を数株発見した。培養能の低下に関与する遺伝子を同定するため、ワイルドタイプの大腸菌の染色体ライブラリーを作製し、培養不能状態に移行しやすい株に導入し、低温・低栄養に曝し培養能の低下しにくいクローンを選択した結果数10のクローンを得た。その中には、定常期で働くシグマファクターの遺伝子を含むクローンを認めた。免疫抗体法で調べた結果VBNCに移行しやすい株の一部は、定常期で働くシグマファクターであるシグマSの発現が欠如しているか、又は低下していることが判明した。その他のクローンについてもどの遺伝子が、培養能の維持に関与しているか検索中である。更にVBNC状態の菌が、病原性を有するかどうかを検討するためマウスモデルを作製中である。現在のマウスモデルでは、高濃度の菌を接種しないと病原性を発揮しないが、高濃度のVBNCの菌の作製は困難なため、低濃度の菌の接種でも病原性を判定可能なモデルの作製を行っている。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 水之江 義充: "酸化ストレス(培養不能菌の蘇生法との関連)"海洋. 33. 146-154 (2003)
-
[Publications] 水之江 義充, 他: "培養不能細菌-Vibrio cholerae"海洋. 33. 86-91 (2003)
-
[Publications] Wai SN, Mizunoe Y et al.: "Vesicle-Mediated Export and Assembly of Pore-Forming Oligomers of the Enterobacterial ClyA Cytotoxin."Cell. 115(1). 25-35 (2003)
-
[Publications] Ishikawa T, Mizunoe Y et al.: "The iron-binding protein Dps confers hydrogen peroxide stress resistance to Campylobacter jejuni."J.Bacteriol. 185(3). 1010-1017 (2003)
-
[Publications] Ohnishi H, Mizunoe Y et al.: "Legionella dumoffii DjlA, a Member of the DnaJ Family, Is Required for Intracellular Growth"Infect Immun. (In press). (2004)
-
[Publications] Wai SN, Mizunoe Y, Jass J: "Medical Biofilms : Problems, detection and control."John Wiley & Sons, Ltd., London. 291 (2003)