2003 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルス感染初期過程におけるノイラミニダーゼの働き
Project/Area Number |
15590425
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
大内 正信 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80107185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堺 立也 川崎医科大学, 医学部, 助手 (00309543)
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Keywords | インフルエンザウイルス / レセプター / ノイラミニダーゼ / 感染初期過程 / 阻害剤 |
Research Abstract |
インフルエンザウイルスはヘムアグルチニン(HA)で細胞のシアロ糖鎖(=ウイルスレセプター)に吸着して細胞内に侵入し、そこで増殖したウイルスは出芽に当たって細胞とウイルスのシアロ糖鎖をノイラミニダーゼ(NA)で切断するでウイルスの自己凝集を防ぎ、感染細胞から遊離すると考えられている。従って、NA阻害剤はウイルス増殖の最終段階でウイルスの遊離を阻害して感染の拡大を抑えると理解されている。しかし我々は、NAはウイルス感染の初期過程すなわち吸着侵入時にも重要な働きを担っていると考えて、本研究を行っている。今年度の研究実績は 1)インフルエンザウイルスA/Aichi/68(H3N2)株がMDCK(イヌ腎由来)およびA549(ヒト肺癌由来)細胞に感染する際、NAの働きを阻害すると感染効率が1/4〜1/10に低下したが、その効果は感染初期(1時間以内)に最も顕著であった。ウイルス吸着から侵入に至るまでの過程が抑えられたと考えられる。 2)感染初期のどの過程が抑制されたのかを調べるため、先ずNA阻害剤の存在および非存在下でウイルスの赤血球凝集価を測定した。両者間で差が見られず、ウイルスのレセプター吸着能へは影響しないと考えられた。 3)HAの膜融合能に対するNA阻害剤の影響を見るため、赤血球を用いてウイルスの溶血能をNA阻害の有無で比較した。NA阻害剤存在下で溶血能は20〜30%低下したが、感染効率の低下を説明するには小さすぎる。 以上の成績から、ウイルスの吸着以後から膜融合に至る前までの過程、おそらく最初に吸着した場所から侵入に適した場所へ移動する過程が抑えられたと考えられる。ウイルスはシアロ糖鎖があればどこにでも吸着できるが、細胞内に侵入するためにはエンドサイトーシスの起こる場所に吸着する必要がある。侵入に不適な場所に吸着した場合にもNAがあればそこを離れて別の所に移ることができるためウイルスは感染の効率を上げることができると考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 堺立也, 大内正信: "宿主細胞表面でのインフルエンザウイルスのスライディング"日本臨床. 61・11. 860-1863 (2003)
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[Publications] Fujimura Y, Takeda M, Ikai H, Haruma K, Akisada T, Harada T, Sakai T, Ohuchi M: "The role of M cells of human nasopharyngeal lymphoid tissue in influenza virus sampling."Virchows Arch.. 444. 36-42 (2004)
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[Publications] 大内正信: "インフルエンザウイルスの感染戦略"岡山医学会誌. 116・1(in press). (2004)