2003 Fiscal Year Annual Research Report
生体肝移植の心理・社会的、倫理的側面についての研究
Project/Area Number |
15590456
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤林 朗 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70221710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 紘一 京都大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20115877)
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Keywords | 臓器移植 / 生体肝移植 / 心理・社会的側面 / 質的研究 / 医の倫理 / 医療倫理 / インフォームド・コンセント |
Research Abstract |
平成15年度は、国内外の文献調査に引き続き、成人間生体肝移植における心理・社会的背景に関する予備的調査として、京都大学医学部附属病院にて生体肝移植のドナーにインフォームド・コンセントの確認を行った医の倫理委員会委員を対象に質的研究を行った。方法としては、半構造化面接を行い、主にドナー面接における経験についてたずねた。インタビューの内容は参加者の了承を得たうえでレコーダーに録音し、逐語録を作成した。逐語録は質的研究法のひとつであるGrounded Theory Approachを参考に、発言内容のコード化とカテゴリー化を行い分析した。調査の結果、大方の参加者が、実際のドナー面接で目立つた困難な問題を経験したことはなかった。しかし、潜在し得る問題として、臓器提供に対するドナーの「自発的同意確認」の難しさが指摘された。問題のある自発的同意のあり方として、(1)移植を必要とする家族への愛情から臓器提供を申し出る「無条件の同意」、(2)移植を拒否することへの良心の呵責や周囲の視線など暗黙のプレッシャーが存在する「やむを得ない同意」、(3)純粋な愛情以外の動機が背景にある「動機のある同意」、の3つのパターンが分析過程上明らかになった。(1)においては、ドナーは家族への強い愛情から臓器提供を申し出ており、移植術の利益や危険性は意思決定の主たる判断材料になっていない可能性があった。(2)の場合、周囲からの明白な強制はなかったが、暗黙のプレッシャーが意思決定に影響していることは否定できなかった。(3)に関しては、自発的意思が確認できれば臓器提供の動機は何でもよいのか、経済的理由や遺産目的など、どこまでが社会的に容認されるのかが問題であった。これらの成果をふまえ、次年度には術後ドナーを対象とした本面接調査を施行する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Akabayashi, A. et al.: "Biomedical Ethics in Japan : The second stage"Cambridge Quarterly of Healthcare Ethics. 12(3). 261-264 (2003)
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[Publications] Akabayasyi, A. et al.: "Perspectives on advance directive in Japanese society."BMC Medical Ethics. 4:5. (2003)
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[Publications] Akabayasyi, A. et al.: "Living related liver transplantation"Gut. 52(1). 152 (2003)
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[Publications] 藤田みさお, 赤林 朗: "ストレス研究と倫理"ストレス科学. 18(1). 1-8 (2003)
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[Publications] 木村利人(編集主幹), 赤林朗(編集): "バイオエシックス・ハンドブック"法研. 462 (2003)