Research Abstract |
前年度の予備調査結果に基づいて,道路交通騒音によるストレス,神経症,心身症の有病率などを指標とし,約400名の幹線道路沿道に居住する住民を対象に質問紙調査を行った。質問紙には,複数の騒音感受性評価尺度および,騒音のアノイアンス,神経症の判別得点などを含めた。また,対象地域において騒音測定を行い,個々の住居の騒音曝露量を推定した。 質問紙調査によって得られた住民反応と騒音曝露量との関係について,騒音感受性の高低によって量反応関係にどのような違いが見られるか,多重ロジスティック解析によって検討した。解析では,性,年齢,職業を交絡要因として調整した。 その結果,前年度に開発した,改良された騒音感受性尺度(Weinstein scale 6-binary)を用いることにより,騒音のアノイアンスの反応率や神経症の有病率について,高感受性群において顕著な量反応関係が検出された。しかし,感受性を考慮せずに全回答者を対象に量反応関係を解析した場合,神経症の有病率については統計学的に有意な関連は認められなかった。また,従来の騒音感受性尺度を用いた場合にも,騒音感受性の違いによる量反応関係の差は顕著ではなかった。 以上の結果,および,前年度の結果は,従来の騒音感受性尺度によって騒音感受性を評価することは必ずしも適切ではないこと,および,本研究で開発した尺度の優位性を強く示唆している。開発した尺度は,従来の尺度を構成する質問群からいくつかの質問を除き,尺度値の計算方性を変更しただけであり,これまでに行われてきた数多くのフィールド調査結果を再分析することが可能である。高感受性群を対象とした解析をすることで,これまでの解析では検出できなかった騒音と住民反応の関連を見出すことができるものと期待される。
|