2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15590506
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
村田 勝敬 秋田大学, 医学部, 教授 (80157776)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 栄二 帝京大学, 医学部, 教授 (50114690)
仲井 邦彦 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (00291336)
石井 範子 秋田大学, 医学部, 教授 (10222944)
岩田 豊人 秋田大学, 医学部, 助手 (00321894)
|
Keywords | ベンチマーク・ドース(BMD) / 環境有害因子 / 鉛 / デルタアミノレブリン酸 / 貧血 / エタノール / 肝細胞傷害 |
Research Abstract |
作業環境中の有害物質による健康悪影響を予防するためにわが国では産業衛生学会の勧告する許容濃度が、あるいは米国ではTLVがある。これらは、NOAELやLOAELから推定されている。しかしながら、米国のCrump(1984年)は、NOAELやLOAELに絡む問題に対し、量-影響関係を重視したbenchmark dose(以下、BMDと略)という概念を提唱した。このBMDは「非曝露集団において異常率P_0を設定し、有害物質の曝露によりその異常率P_0よりさらに一定量の異常増加(これをbenchmark response、BMRと呼ぶ)を引き起こす曝露濃度」と定義される(研究発表の34番)。このBMDは米国環境保護庁(EPA)で採用され、胎児期にメチル水銀曝露を受けた小児の神経影響が起こり始める濃度(臨界濃度)の推定に応用されている。 本研究は、(1)δアミノレブリン酸および神経機能に及ぼす鉛影響の臨界濃度の推定、(2)胎児性のメチル水銀曝露による神経影響の解析および臨界濃度の推定、(3)肝機能に及ぼす飲酒影響の臨界濃度の推定を行うとともに、(4)有機溶剤の運動神経機能への影響の有無を明らかにすることを目的とした。 δアミノレブリン酸(ALA)へ鉛の影響は血中鉛濃度10μg/dl以下で起こり、また平衡機能への影響は15μg/dl前後より起こり始めることが推定された。また、胎児期メチル水銀曝露による聴性脳幹誘発電位潜時への影響は、マデェイラ諸島の結果と併せて解析すると、母親毛髪水銀濃度10μg/g以下で現れ始めることが示された。同様に、飲酒による肝機能(GOT)影響は1日当たり100%エタノール換算値で約50g以上より現れ始めることが示された。 本研究により、BMD法は産業保健や臨床医学に応用可能であった。従って、BMD法の適用により有害物質のリスク評価からリスク管理への橋渡しが容易となるので、今後の予防医学の発展にBMD法が十分に寄与すると考えられる。
|
Research Products
(6 results)