2003 Fiscal Year Annual Research Report
神経系に作用点を持つ有機化学物質の職域集団における生殖影響リスク評価
Project/Area Number |
15590510
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上島 通浩 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (80281070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 英治 愛知医科大学, 医学部, 助教授 (90206128)
市原 学 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90252238)
那須 民江 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10020794)
山野 優子 昭和大学, 医学部, 講師 (30167580)
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Keywords | 化学物質 / 生殖機能 / 曝露 / 尿中代謝物 / 精液指標 / 性ホルモン / 性比 / リスク評価 |
Research Abstract |
過去50年間でヒトの精子数が半減しているとのCarlsenらの報告(1992)以来、環境化学物質が生殖機能に及ぼす影響の有無について関心が高まっている。しかし、ヒトでの影響に関する研究は立ち後れ、特に日本人でのデータはごく限られている。本研究では、神経系に作用点をもつ化学物質、特に農薬類に曝露する職域集団で生殖機能評価を行う。今年度は、殺虫剤生産工場に勤務する男性職員70名のうち同意の得られた54名に自覚症状や子供の性比等についての問診票調査を行い、うち34名に血液中テストステロン、卵黄刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)濃度の測定、パッシブサンプラーによる時間加重平均個人曝露量の測定および尿中の殺虫剤および有機溶剤代謝物の測定を行った。6名についてはWHOマニュアルに基づき精液指標を測定した。殺虫剤代謝物である尿中ブロム濃度は、曝露作業者群で有意に高値を示し曝露を反映していた。有機溶剤への曝露濃度はトルエンで2.5〜13.5ppm、酢酸エチルで1.5〜7.3ppmであった他は一般環境と大差なく、混合曝露評価として許容濃度を下回っていた。子供のいる作業者は、曝露群、非曝露群とも7割で有意差はみられなかった。子供の男女性比は曝露開始後に妊娠した子供でほぼ1:1で、男性比の低下は認められなかった。血中性ホルモン濃度は、標準値の範囲内でLHが曝露群で有意に高値となった。また、曝露の有無に関係なくFSHは年齢と有意な正の相関が見られた。精液指標では明らかな異常値を示す者はみられなかったが、参加率が曝露群の11.5%と低く母集団を代表していないと思われた。自覚症状については曝露群に有意に多くみられた。今回の調査の範囲においては、明確な生殖影響は集団としてみとめられなかった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kamijima M et al.: "A Survey of Semen Indices in Insecticide Sprayers"Journal of Occupational Health. 46(In Press). (2004)
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[Publications] 上島通浩, 柴田英治: "臨床医のための「有機溶剤中毒」 1.典型的な中毒の病像・病態"日本医事新報. 4139. 33-36 (2003)
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[Publications] 上島通浩, 柴田英治: "臨床医のための「有機溶剤中毒」 2.有機溶剤職場の産業医に必要な視点"日本医事新報. 4144. 33-36 (2003)
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[Publications] 上島通浩, 柴田英治: "臨床医のための「有機溶剤中毒」 3.有機溶剤中毒の最近の話題"日本医事新報. 4148. 33-36 (2003)
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[Publications] Yamada T, et al.: "Exposure to 1-bromopropane caused ovarian dysfunction in rats"Toxicological Sciences. 71. 96-103 (2003)