Research Abstract |
8週齢の雌ウイスターラットの性周期をスメア内細胞の観察により把握し,10週齢の繁殖前期に交配した。妊娠ラットは2群に分け2,3,7,8ーTCDD,0.1μg/kg/dayあるいは同量のコーンオイルを妊娠9日より19日までの11日間,経口ゾンデにて胃内へ直接投与した。自然分娩にて出生した仔ラットは生後4日から14日の12日間に毎日1回,傾斜板テストを行った。このテストは傾斜板(傾斜角25度)に仔ラットの頭を下向きに置き,体軸を180度旋回して上方に上る姿勢を示すまでに要する時間(秒)を測定するもので,60秒を上限とした。また,生後31日から44日の14日間,毎日1回,学習機能検査法の一つであるシャトルアボイダンスシステムを用いた条件回避学習課題を行った。これはランプおよびブザーにより電気ショックを予知し,隣の部屋へ移動することにより危険を回避することを学習させるシステムであり,10回試行した時の回避率を学習能力の指標とした。その結果,傾斜板旋回時間は成長により短縮していくが,ダイオキシン暴露群の旋回所要時間は対照群に比べ,雄では生後8日目と10日目で,雌では9日目で有意に長く,協調運動の発達が遅れる可能性が示唆された。シャトルアボイダンスによる回避率も成長と共に高くなるが,ダイオキシン暴露群の回避率は雄で生後37-39日目から対照群に比べ低くなり,40-42日目には有意な差となった。また,回避行動の潜時も生後40-42日目以降対照群に比べ長くなり,43-44日は有意に長かった。さらに,活動性を示す非試行時移動率も雄の暴露群では生後35日,41-44日目で有意に低化していた。実験終了後2-4日目に脳を摘出し,全脳,大脳皮質,海馬,扁桃体,視床下部,最後野の各部位の重量を測定したところ,ダイオキシン暴露群の全脳重量および大脳皮質重量の平均値は対照群に比べ有意に低かった。
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