2005 Fiscal Year Annual Research Report
Aldh2欠損マウスによるアルコール性臓器障害の機序解明とその食道癌予防への応用
Project/Area Number |
15590527
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
川本 俊弘 産業医科大学, 医学部, 教授 (60177748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 倫浩 産業医科大学, 医学部, 助教授 (00309965)
一瀬 豊日 産業医科大学, 医学部, 助手 (80341494)
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Keywords | ALDH2 / CytochromeP450 2E1 / Knock out mouse / esophageal cancer |
Research Abstract |
【背景と目的】日本人の約半数はアルデヒド脱水素酵素(ALDH)2が不活性化している(ALDH2不活性型)。このALDH2不活性型のヒトでは飲酒によりアルコール性肝障害や食道癌に罹患しやすいことが疫学調査で明らかになっている。このため、アルコール性臓器障害の機序を明らかにするために当研究室で作製したAldh2欠損マウス(Aldh2 KO mice ; Kitagawa et al., 2000)と野生型(C57BL/6)マウスのAldhやチトクロームP450(Cyp)の発現を検討した。 【対象と方法】(1)野生型(C57BL/6)マウスとAldh2欠損マウスの肺、心、腎、睾丸、肝、食道、胃、結腸、など各臓器のAldh1、Aldh2、Cyp1a1、Cyp2e1とCyp4b1発現を免疫組織化学染色法により検出して、両型マウスの各酵素の発現の違いを臓器別に比較検討した。 (2)両遺伝子型マウスの肝よりミトコンドリアを抽出し、Aldh1やAldh2の発現をウエスタンブロット法で検出して比較検討した。 (3)食道癌による51例のヒト食道切除症例を対象として、3μmのパラフィン包埋切片を作成した。LSAB(labelled streptavidine biotin)法によるALDHの免疫組織化学染色を施行した。 【結果】(1)Aldh2欠損マウスではAldh2発現は認めなかったが、野生型とAldh2欠損マウスでAldh1やCyp1a1、Cyp2e1、Cyp4b1は同じ程度発現していた。(2)肝ミトコンドリアのウエスタンブロット法により、Aldh2欠損マウスではAldh2発現は認めなかったが野生型とAldh2欠損マウスでAldh1やCyp1a1、Cyp4b1は同じ程度発現していた。また、Cyp2e1発現は野生型に比べAldh2欠損マウスで高値傾向を示した。(3)ALDH2染色を行った51例の食道切除症例中、43例(84%)にALDH2発現が陽性であった。DI : drinking index(一週間に飲酒した日本酒合数×年)が800を超える重度の飲酒者におけるALDH2陽性率は100%(23/23)であり、DIが800未満の71%(20/28)に比べて有意に高値を示した(p<0.05)。 【考察】各個人に則した食道癌発生の危険度を予想するために、Aldh2欠損マウスを用いた研究は有用であることが示された。
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Research Products
(6 results)