2003 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染物質モニタリングへのアプローチ:形質転換酵母遺伝子による標的因子検索
Project/Area Number |
15590529
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
山本 玲子 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 教授 (70108504)
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Keywords | メチル水銀 / 酵母 / 耐性遺伝子 / グルコサミン6リン酸 / 環境汚染物質 / Msn2転写因子 / 水俣病 / モニタリング |
Research Abstract |
【目的】酵母は安全でかつ扱いやすい、目的とする遺伝子を高発現させることが可能、などの特質をもち、生体における遺伝子とその機能との対応づけを最も容易かつ厳密に行える真核生物である。そのため、カドミウムやメチル水銀(MHg)などの環境汚染物質の毒性メカニズムを解明するには、酵母を用いた細胞内因子の検索が有効である。水俣病を引き起こしたメチル水銀の毒性発現機構・生体の防御機構は未だに不明で、予防・治療法の抜本的展開に至っていない。そこで、環境汚染物質の一つとしてメチル水銀を取り上げ、標的とする因子の検索とその生体内での作用機構を検討した。 【結果・考察】MHgの毒性を増強させる因子として同定されているMsn2(Cys2 His2 Zn finger型転写因子:様々なストレスに応答して核に移行し標的遺伝子のプロモーター上にあるSTRE (stress response element)に結合しその転写を活性化)高発現酵母を作成し、高感受性を確認した。また、選択培地でMHgに対する高感受性が消失した酵母を検索し、この酵母から抽出したPlasmidをMsn2高発現酵母に再導入後、MHg感受性を確認した。その結果、断片M2-1中の遺伝子GFA1の存在がMsn2高発現によるMHg高感受性を消失させることが明らかとなった。同定されたGFA1はGFAT(L-glutamine・D-fructose-6-phosphate amidotransferase)をコードする遺伝子である。GFATは細胞内で合成される全てのアミノ糖の前駆体であるグルコサミン6リン酸の合成を触媒するため、細胞生存に必須の酵素である。また、酵母細胞内におけるMHgの標的分子でもある。さらに検討した結果、Msn2高発現酵母ではGFA1mRNAの発現が対照酵母に比べ半減していた。以上から、Msn2高発現酵母では、Msn2がGFA1の転写を抑制し、GFA1 mRNA発現が抑制されることでMHg高感受性となる可能性が考えられた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Otabe, N., Hwang, G., Naganuma, A., Yamamoto, R.: "Increase in sensitivity to methylmercury by Msn2 overexpression in Saccaromyces cerevisiae"Forum2003: Pharmaceutical Health Science・Environmetal Toxicology. 23. 178 (2003)
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[Publications] 山本玲子, 小田部希, 黄基旭, 永沼章: "酵母のメチル水銀毒性増強因子Msn2"日本衛生学雑誌. 59(2). 152 (2004)