2004 Fiscal Year Annual Research Report
地域における児童虐待の早期発見のシステム作りに関する研究
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15590541
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
関 秀俊 金沢大学, 医学部, 教授 (60171328)
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Keywords | 児童虐待 / 虐待認識 / 虐待通告 |
Research Abstract |
児童虐待のほとんどが家庭内という密室でおこなわれているため、早期発見には近所の人や知人などの一般市民からの通告に重要な役割が期待される。しかし、せっかく虐待に気付いていても通告が遅れ不幸な結果になることも報告されている。そこで、児童虐待やその通告に関する一般市民の感情や認識を明らかにし、さらに虐待行為を発見したと想定したときの通告行動に関連する要因を検討した。 一般市民を対象に属性、児童虐待に関する認識、虐待通告に関する認識、そして虐待ビネットにおける通告行動を質問紙法にて調査した。 児童虐待問題に対する関心は高いが全体の約70%が通告先をはっきりとは知らず、また虐待かどうかはっきりしない時点での通告は難しく、通告したことが知れてしまう心配や近所づきあいの悪化を懸念していることなどが明らかとなった。また、因子分析により虐待および通告に関連する感情には、「虐待が存在することの容認」、「虐待家庭への直接的援助」、「虐待悪化への対策」、「通告における不安」、「通告意義の認識」、「法による罰則の必要性」の合計6因子が抽出された。「虐待家庭への直接的援助」、「虐待悪化への対策」、「通告意義の認識」は通告行動を促し、「通告における不安」は通告行動に抑制的に作用している。さらに因子間で「虐待家庭への直接的援助」と「通告意義の認識」とに正の相関がみられ、また近所づきあいや子どもの養育観、さらに虐待そのものに対する知識も各感情の因子と相関があり、通告行動を促すことなどが明らかとなった。 今後、虐待の早期発見と重症化防止における市民からの通告の意義や知識を一般的に普及させ、通告に伴う不安感を減少させる働きかけが必要であると考えられた。
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