Research Abstract |
疲労の蓄積状態が瞳孔径とその変動として現われるものと想定し,それを非侵襲的にかつ短時間に測定・評価する手法を確立することを目的とし,CCDカメラによる瞳孔画像データを解析検討した.瞳孔径は,IRIS C7364(浜松ホトニクス社製)及びF2D(AMTech社製)にて測定し,瞳孔指標として,瞳孔直径,PFR(瞳孔径の平均値/標準偏差),高速フーリエ変換による1.0Hz以下の瞳孔径変動の周波数成分(FFT),PUI(pupillary unrest index)を用いた.自覚的疲労・眠気,ストレス指標として,疲労困憊尺度,Stanford Sleepiness Scale,VAS眠気尺度,疲労自覚症状調査票などを用いた.他の生理指標として唾液中Ig-A,cortisol,血清cortisol,DHEA-S濃度,心電図R-R間隔変動などを用いた。cross-sectionalな検討として,夜勤に従事する病院ナース17名,人間ドックを受診した男性勤労者38名,企業の従業員34名について分析した.また,実験的検討として,13名の男子学生に5時間睡眠制限7日間および8時間睡眠7日間を課し,前後の比較を行った.その結果,自覚的な疲労症状・眠気が高い状態では,瞳孔直径は小さく,FFT成分は大,PFRは小,PUIは大となることが明らかとなり,疲労蓄積状態における瞳孔指標の一貫した傾向が示された.今後は,瞬目時のデータの処理方法の開発をすすめるべきこと,他の生理的指標との同時計測による確度の高い疲労蓄積状態の把握・評価システムを確立すべきことなどの課題が明らかとなった.
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