Research Abstract |
脳死判定に影響を与える可能性のある薬物のうち,ベンゾジアゼピン系薬物のミダゾラム,ジアゼパム,フルニトラゼパム,抗不整脈薬のベラパミルならびにそれぞれの活性代謝物について,LC/MS/ESI法を用いたスクリーニング法を確定した.また,全身麻酔剤のプロポフォール,ドロペリドール,筋弛緩剤の塩酸ベクロニウム,抗痙攣薬のチアミラールについて,GC/MSを用いたスクリーニング法を検討した.これらはいずれも,製薬会社より薬物標準品の提供を受けられず,医療用注射液からEtOH抽出したものを用いて検討したため定量性に若干の検討課題が残ったのものおおむね良好な成績であった.次に,2005/1/16より2005/2/27に救命救急センターに入室した患者のうちイムノアッセイTriage DOAで陽性の結果を示した24例について,一般薬物スクリーニングの他に,上記LC/MS,GC/MSスクリーニング法(脳死薬物スクリーニング)を実施した.24例の疾患分類は,中毒15,外傷1,呼吸不全2,心不全1,脳血管障害2,血管緊急症1,急性腹症1,その他1,であった.これらの患者試料(血清,尿など)の脳死薬物スクリーニングの結果,フルニトラゼパムが5例に検出された.24例のうち1例が入室時心拍停止であったが,いずれの薬物も検出されなかった.以上より,一般薬物スクリーニングの他に,脳死薬物スクリーニングを実施することが可能であることが示唆された.加えて,トリアゾラムとベラパミル中毒の剖検試料中濃度を測定した.右心血でトリアゾラム23.1ng/,1,ベラパミル0.18μg/ml,加水分解尿で1-OHトリアゾラム942.9ng/ml,肝でノルベラパミル0.33μg/g.死因は左胸部刺創と認められたが,トリアゾラムについては死亡に影響を与えた可能性があり,ベラパミルは治療レベルの血中濃度と考えられた.これらのことから,脳死薬物スクリーニングの有効性の検討のために多角的な症例検討が必要であることが示された.
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