2003 Fiscal Year Annual Research Report
大腸粘膜細菌とプロバイオテクスの腸管免疫モジュレーターとしての役割
Project/Area Number |
15590688
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
大草 敏史 順天堂大学, 医学部, 講師 (50160445)
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 粘膜分離細菌 / 腸内細菌 / プロバイオテクス / 炎症性サイトカイン / 粘膜細胞侵入性 |
Research Abstract |
方法:潰瘍性大腸炎の病変粘膜分離細菌19菌種(Gut 2003;52:79-83)、大腸腺腫の粘膜分離細菌3菌種、ヨーグルト生産用乳酸菌4菌種(明治乳業分与)を培養し、各菌数1×10^9 CFU/mLの菌液を作成し、大腸粘膜培養細胞Caco-2(理研RCB0988,MEM+10%FBS培養)に1mL接種し、2時間共培養(5%CO_2)し、上清をとりimipenem 50μg/mLを培地に加えて4時間培養した。その上清を採取し、ELISA法でIL-8とIL-6を測定した。残りの培養細胞をセルリフターで回収し、滅菌生食で洗浄、0.1%SDSで細胞を溶解し、ABCM培地で、3日培養した。 結果:潰瘍性大腸炎と大腸腺腫の粘膜分離細菌の内、嫌気性菌では、Fusobacterium variumとEubacterium aerofaciensが2-6×10^4 CFU/mLと培養され、好気性菌では、E.coli, Enterococcus feacium, Stapylococcus epidermidis, Streptcoccus sanguisが 0.6-8×10^4 CFU/mLと培養され、これらの菌種に細胞侵入性が認められた。残りの菌種とヨーグルト生産用乳酸菌は培養されず、侵入性はなかった。IL-8産生能については、いずれも測定限界以下であったが、IL-6については、F.variumが3.37±0.30pg/mLと最も高く、次いで、Bacteroides vulgatus 2.65±1.47、Stapylococcus epidermidis 1.43±1.01、Eubacterium, lentum 1.42±0.01の順であった。ヨーグルト生産用乳酸菌(Lact.delbrueckii, Lact.gasseri, Bifido. longum, Str.thermophilus)については、IL-6産生能は認められなかった。 結論:腸内細菌のうち、粘膜細胞侵入性があり、かつ粘膜から炎症性サイトカインIL-6産生を引き起こす細菌があることが判明した。一方、probioticsとされるヨーグルト生産用乳酸菌には、粘膜細胞侵入性も炎症性サイトカインIL-6産生能も認められなかった。 追加:Caco-2細胞はToll-like receptor(TLR)の発現が少ないため、IL-8の産生が認められなかったが、TLRが発現している大腸粘膜培養細胞SW480とHT-29で同様の実験を行ったところ、いずれもFusobacterium variumの接種により高濃度のIL-8産生が認められた。以上から、無害と考えられていた腸内細菌の中に、炎症起因性に働くものがあることが明らかとなった。
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