2005 Fiscal Year Annual Research Report
非相同末端再結合修復機礎のhaploid insufficiencyと大腸発がん
Project/Area Number |
15590707
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Research Institution | National Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
落合 雅子 国立がんセンター(研究所及び東病院臨床開発センター), 生化学部, 主任研究官 (90150200)
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Keywords | 非相同末端再結合(NHEJ)修復 / haploid insufficiency / 大腸発がん / DNA-PKcs変異 / gpt deltaマウス / azoxymethane |
Research Abstract |
DNA-PKcs変異を導入したgpt deltaマウスを用いたin vivoでの自然発生及びazoxymethane(AOM)誘発突然変異における変異スペクトラムに対するhaploid insufficiencyの影響を調べた。まず、欠失型変異検出系(Spi^- assay)において大腸粘膜DNAから得られた突然変異体の変異部位における欠失サイズを解析した。自然発生突然変異の場合、突然変異体頻度は、scid/scid,scid/+,+/+の各遺伝子型で10^6個のプラーク当たり2.3±1.5,3.1±2.1,2.4±1.3であったが、大欠失型(1kbp以上の欠失サイズ)の突然変異体頻度は、0.6±0.4,0.3±0.5,0.3±0.4であり、小欠失型は、1.5±1.7,2.1±1.7,1.1±1.1であった。AOM誘発突然変異の場合は、突然変異体頻度は、scid/scid,scid/+,+/+の各遺伝子型で、10^6個のプラーク当たり7.3±1.6,25.9±12.5,4.7±1.1であったが、大欠失型は1.1±0.9,1.4±0.8,0.1±0.3であり、小欠失型は、5.9±1.7,8.6±7.8,3.7±1.8であった。どちらの場合も、scid/+では+/+よりも小欠失型変異体頻度が高い傾向が認められた。AOM誘発突然変異の場合、scid/+は+/+よりも有意に大欠失型変異体頻度が高く、scid/scidと同様の傾向が認められた。小欠失のみならず、1kbp以上の大欠失のDNA修復機構においてもhaploid insufficiencyが存在している可能性が示唆された。自然発生突然変異における変異スペクトラムを調べた結果、小欠失型変異において、scid/+は、scid/scid、+/+と同様にgam遺伝子内の同一塩基のリピート配列中の1塩基欠失が多く認められた。scid/+に多く検出された301番目のATC→ACという1塩基欠失は、他の遺伝子型では認められず、scid/+において生じやすい変異である可能性がある。大欠失型変異の欠失サイズは、4000-6000bpであり、全例で欠失部位の2-4bpの重なりが認められたが、他の遺伝子型も同様の結果であった。AOM誘発突然変異体における変異スペクトラムは、現在解析中である。 非相同末端再結合(NHEJ)によるDNA修復機構に関与するDNS-PKcsの変異を導入したgpt deltaマウス大腸において、AOM誘発突然変異は、+/+よりもscid/+で多く検出され、haploid insufficiencyが存在することが示唆された。発がん物質などの突然変異原物質に暴露されている状態では、NHEJによるDNA修復機構の阻害がゲノムの不安定化を誘発している可能性がある。
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