2003 Fiscal Year Annual Research Report
頻脈性不整脈の発生・維持機構を分子生物学的に解明する
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15590753
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
大草 知子 山口大学, 医学部, 助手 (00294629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 益徳 山口大学, 医学部, 教授 (60116754)
矢野 雅文 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (90294628)
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Keywords | 頻脈性不整脈 / 心房細動 / ギャップ結合 / コネキシン / 興奮刺激伝播 / レニン・アンジオテンシン系 |
Research Abstract |
頻脈性不整脈、なかでも心房細動(atrial fibrillation, AF)は日常臨床で最もよく見かける不整脈であり、特に70歳以上の健常者と思われる人の約6〜10%にみられると報告され、近年の高齢化に伴いその罹患率は増加している。AF時には血栓症を合併する危険性があり、特に高齢者での脳血栓塞栓症は重篤な合併症の一つである。さらにAFを含めた頻脈性不整脈は長時間持続すれば心不全を合併し、脳血栓塞栓症とともにその予防は医学界での重要なテーマの一つである。頻脈性不整脈の惹起・維持機構には心筋細胞の器質的変化も関与しており、これには細胞間結合構成蛋白や間質組織の変化が含まれる。AFをはじめとする頻脈性不整脈の発生・維持には心筋の機能的・器質的リモデリングが重要な役割を担っていると考えられる。近年、不整脈の発生・維持機構の一つとして細胞内Ca2+ホメオスタシスの異常が考えられているが、その詳細なメカニズムも未だ明らかではない。我々はこれまで種々の病的心筋細胞(心肥大、心筋症、頻脈誘発性心不全等)におけるCa2+制御機構の異常を報告してきた。また、Ca2+制御蛋白質の一つであるIP3受容体は細胞間結合のギャップ結合に存在することも報告し、細胞間結合構成蛋白質の変化も頻脈性不整脈の発生・維持に重要な役割を担っていることが考えられる。 平成15年度は、1)AF患者でのギャップ結合構成蛋白、connexin(Cx)の変化について検討した。方法:慢性AF僧帽弁疾患患者(MF)、洞調律僧帽弁疾患患者(MN)、洞調律コントロール患者(C)、各10例の手術中に得られた右心耳のCx40及びCx43発現量を解析した。結果:Cx40蛋白質発現量はMF群で、C群、MN群に比し有意に低下し、Cx40遺伝子発現量もMF群でC群、MN群に比し低下していた。Cx40のセリンリン酸化は、MF群で他の2群に比し増加していた。Cx43発現量は3群間に有意差はなかった。免疫染色でC群のCx40配列の断片化が見られた。結語:Cx40発現量の量的・質的変化は細胞間結合の異常を引き起こし、心房筋の電気的特性を変化させAFを惹起・持続させる可能性が示唆された。また、2)培養心筋細胞への高頻度電気刺激負荷によるギャップ結合理リモデリングの検討を行った。心筋細胞間の興奮伝播はギャップ結合を介して行われ、その質的・量的変化は回帰性不整脈の一因になると考えられている。新生児ラット培養心筋細胞を用いて、高頻度電気刺激(RES)によるCx43発現量と興奮伝播の変化について検討した。方法と結果:培養心筋細胞に120分間のRESを負荷し、RT-PCRおよびWestern blot法を用いてCx43発現量の変化を経時的に解析した。RESによりCx43蛋白質および遺伝子発現量は60分後には有意に増加した。心筋細胞中のangiotensin II(AngII)は15分後に約2倍に上昇した。MAPK系のERKは2峰性に5分と60分で、またJNKも15分と60分で著明に活性化された。p38MAPKは5分後に1峰性に活性化された。細胞外電位記録法により心筋細胞の興奮伝播特性の変化を解析したところ、RESによりactivation timeは著明に短縮した。これらの変化はlosartanにより抑制された。結語:RESは、早期より心筋細胞内のAngII産生を増加し、MAPK系を活性化することによりCx43発現量を増加させた。その結果、細胞間の刺激伝播異常を引き起こし不整脈基質の一つとなる可能性が示された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Tomoko Ohkusa, Tomoko Nao: "Comparison of Expression of Connexin in Right Atrial Myocardium in Patients with Chronic Atrial Fibrillation -vs- Those in Sinus Rhythm"American Journal of Cardiology. 96巻・6号. 678-683 (2003)
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[Publications] Tomoko Ohkusa, Noriko Inoue: "Rapid Electrical Stimulation of Contraction Modulates Gap-Junction Protein in Neonatal Rat Cultured Cardiomyocytes : Involvement of Mitogen-Activated Proteir Kinases and Effects of Angiotensin II-Receptor Antagonist"Journal of the American College of Cardiology. (in press). (2004)