2003 Fiscal Year Annual Research Report
慢性心不全の蛋白ホスファターゼ1異常亢進を超高効率心筋遺伝子治療で是正する
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15590754
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
池田 安宏 山口大学, 医学部, 寄附講座教員 (00260349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 雅文 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (90294628)
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Keywords | 慢性心不全 / 拡張型心筋症 / 蛋白ホスファターゼ1 / アデノウイルスベクター / アデノ関連ウイルスベクター / 心筋症ハムスター / 高効率心筋遺伝子導入 |
Research Abstract |
慢性心不全における蛋白ホスファターゼ1の異常亢進の生理的意義に関してはいまだ不明の点が多い。我々は蛋白ホスファターゼ1の生理学的調節機構について内因性調節蛋白であるInhibitor-1(I-1),Inhibitor-2(I-2)をアデノウィルスを用いて心筋細胞に過剰発現させ、その生理機能に及ぼす働きについて検討した。I-1,I-2の過剰発現は細胞内においてともに、PP1の活性を低下させたが、細胞内リン酸化蛋白における影響はI-1,I-2で異なっていた。I-1はCa^<2+>制御蛋白のうちRyRをよりリン酸化するのに対し、I-2はPLNをより強くリン酸化する傾向があるのがわかった。β受容体刺激やForskolin刺激ではI-1、I-2過剰発現ではどちらとも収縮性は亢進したが、I-1過剰発現ではRyRからのCa^<2+>リークによると思われるproarrhythmicな自発収縮がみられた。I-1、I-2の細胞内でのPP1活性の調節に細胞内局在があることが強く示唆された。(AHA年次集会で発表Circulation 108:IV-125,2003) 次に、心筋症ハムスター心筋で上昇しているPP1活性を補正したときに、心不全の進行がどうなるか調べるためにPP1の内因性特異的阻害蛋白であるInhibitor-2の生体内高効率心筋遺伝子導入を行った。すでに心機能が低下し、心不全症状が発現している15週齢の心筋症ハムスターに対し心筋高効率遺伝子導入を行った。治療対照群にはAdV.LacZ治療群を使用した。遺伝子導入後1週間後に血行動態を測定し、遺伝子導入効率を評価したところ、対照群のLacZの発現効率は30-50%であった。AdV.I-2導入群では遺伝子導入前に比べ明らかに左心室内径が縮小し、%FSでは経時的な低下が抑制された。Protein Phosphatase 1の阻害は心不全進行における左室リモデリングを正常化し、左室壁ストレスを有意に低下させたと考えられる。現在詳細な生化学的解析を行っている。(投稿準備中)。 カリフォルニア大学サンディエゴ校との共同研究で行っているPhospholamban(PLN) dominant negative mutantの発現を促すAAVベクターを用いてラット心筋梗塞後心不全に対する変異型PLNの治療効果を検討したところ、遺伝子導入後6ヶ月において、収縮性は著明に改善し、対照群でみられた左心室のリモデリングも著明に改善された(J Clin Invest 2004)。
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Research Products
(1 results)