Research Abstract |
A549肺腺癌細胞株,A549/CV(コントロールベクター導入細胞),A549/TP(チミジンホスホリラーゼ強制発現株)の各細胞株をヌードマウスの尾静脈より注入し10週間後に肺表面の転移結節数を数え,転移・増殖能の変化につき検討を加えた。その結果,A549/TP群で有意に肺表面の転移結節数が増加し,TP inhibitor(TPI)投与により有意に肺転移を抑制することができた。 我々はさらに,肺癌に対する,マクロライド系抗生物質であるclarithromycin(CAM)の抗腫瘍効果の報告に着目し,CAMのTPに対する効果を調べた。その結果,A549細胞においてCAMはTP発現を濃度依存性に低下させることがわかった。さらに,CAMはA549細胞の増殖能には影響を及ぼさなかったが,in vitroでA549細胞の浸潤能を抑制した(Matrigel invasion assay)。 今後,CAM→TPのシグナルの下流に存在する分子(蛋白分解酵素,細胞骨格制御分子,接着因子など)を同定し,CAMのTPを介した肺腺癌細胞の浸潤能抑制機構を解明していく予定である。また,他の非小細胞肺癌株での検討,つまり,肺扁平上皮癌細胞株(QG56,EBC1,H520,LK-2),肺腺癌細胞株(PC9,NCI-H23,NCI-H322,NCI-H358,Calu-3,PC-14,LC-2/ad, RERF-LC-KJ,PL16T)を対象に,A549細胞と同様の検討,即ちTPの発現(ELISA),TP cDNA導入細胞の増殖能・浸潤能,in vivo浸潤・転移能,TPIの効果,の各々についても評価していきたい。
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