2004 Fiscal Year Annual Research Report
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)遺伝子操作マウスを用いた嚢胞形成機序の解明
Project/Area Number |
15590838
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
望月 俊雄 北海道大学, 大学病院, 講師 (00277120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幡野 雅彦 千葉大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (20208523)
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Keywords | 多発性嚢胞腎 / ADPKD / PKD1 / ノックアウトマウス / ノックアウトキメラマウス |
Research Abstract |
常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)はPKD1遺伝子あるいはPKD2遺伝子の異常を原因とする、最も頻度の高い遺伝性腎疾患である。今回私たちは、ADPKDの病態解明ならびに将来的な治療へ向けて、pkd1遺伝子をターゲットとする疾患モデルマウスの作製に取り組んだ。 今回私たちは、遺伝子操作pkd1の2つの遺伝子対が両方とも欠失させたpkd1遺伝子ダブルノックアウトES細胞を用いることにより、最初から正常な細胞(pkd+/+細胞)と完全にpkd1遺伝子機能を失った細胞(pkd-/-細胞)をもつキメラマウスを作製した。このマウスはそのキメラ率によって嚢胞形成の程度に大きな差が認められたが、キメラ率の低いマウスでは胎生致死を免れ、最高2ヶ月まで生存し、腎臓では大小さまざまな嚢胞が多発し、ヒトADPKDに非常に類似したものであった。詳細な解析の結果、これまでの定説であったツーヒット説では異常細胞だけでできていると思われていた嚢胞は、異常細胞だけでなく(モノクローナルでなく)、正常細胞も巻き込んで発生することがわかった。さらにその増殖には細胞周期調節因子であるP53の発現低下(これまではP21といわれていた)が関わること、徐々に正常細胞はJNKシグナルによりアポトーシス(細胞死)に陥ること、そのかわりガン細胞のようにP53の発現低下を伴った「不死化」した異常細胞が嚢胞壁を占めるようになり、さらに増殖に拍車がかかり嚢胞が巨大化していくことを明らかにした。すなわち、嚢胞形成過程にはいくつかの段階があり、それぞれにさまざまなシグナルが働いていることが判明した。したがって正常なPKD1遺伝子は生体内で、P53およびJNKの発現調節を行い、腎尿細管上皮細胞の増殖を制御することによって、尿細管径(太さ)を調節していると考えられた。
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