2004 Fiscal Year Annual Research Report
DNA修復機構を介する急性腎不全予防法の開発に関する研究
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15590846
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Research Institution | HAMAMATSU UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE |
Principal Investigator |
菱田 明 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70111812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 龍夫 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (30200819)
藤垣 嘉秀 浜松医科大学, 医学部, 助手 (20283351)
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Keywords | 急性腎不全 / シスプラチン / p21 / 腎皮質 / 近位尿細管 / アンチセンス |
Research Abstract |
平成15年度までの研究で、シスプラチン(CDDP)誘発急性腎不全ではCDK阻害因子のp21やp27の発現増加が急性腎不全の程度の軽減に有用であることを明らかにしてきた。本年度は、p21アンチセンズを用いて、p21の作用を抑制したときの急性腎不全に及ぼす影響を検討した。CDDP(5mg/kg)の静脈内投与によりラットに急性腎不全を惹起した。p21 antisense oligodeoxynucleotide(ODNもしくばp21 sense ODNをCDDP投与日から5日目まで36時間毎に静脈内に投与した。また、CDDPによる急難腎不全からの回復期にCPPPを再投与したときに認められる急性腎不全に対する抵抗性の獲得にp21が関与するかを検討するため、一回目のCDDP投与14日目にCDDPを再投与すると共に、13日目から19日目までp21 antisense ODNもしくはp21 sense ODNを36時間毎に静脈内に投与した。第1回のCDDP投与後5,19目に血清クレアチニン値を測定し、3,5,16,19日に腎を摘出した。 投与したp21 ansense ODNは主として腎皮質の近位尿細管に主として取り込まれた。3,5,16,19日目のp21陽性細胞数はp21 antisense投与により皮質近位尿細管で有意に減少したが、髄質外層外帯の近位尿細管では有意な抑制は認めなかった。p21投与により皮質尿細管の組織障害を増悪させた。一方、髄質外層外帯の組織障害の程度、クレアチニン値には影響しなかったす以上の結果は、CDDPによる腎障害において、腎皮質の近位尿細管においてp21は障害を軽減する方向で作用していることが明らかになった。p21 antisense ODNの投与によって、CDDP誘発急性腎不全の主たる障害部位である髄質外層外帯の障害や血清クレアチニン値には影響がなかったが、今回用いたアンチセンスが髄質外層外帯への取り込みが不十分であったことから、この部位の障害におけるp21の役割については結論できなかった。今回の結果は、CDDP誘発急性腎不全においては、腎皮質近位尿細管の障害が腎機能には大きく影響しないことも示している。
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