2004 Fiscal Year Annual Research Report
新世代のアデノウイルスベクターを用いた進行性筋ジストロフィーの遺伝子治療
Project/Area Number |
15590897
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
内野 誠 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (20117336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 寧 熊本大学, 医学部附属病院, 助手 (60346997)
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Keywords | 遺伝子治療 / アデノウイルスベクター / ヘルパー依存性 / 筋ジストロフィー / 接着受容体 / ジストロフィン / 反復投与 |
Research Abstract |
我々は今回、全長dystrophin発現カセットおよびHDAdの増幅時にマーカーとして使用するLacZ発現カセットをもつHDAdLacZ-dysと、全長dystrophin発現カセットとCAR発現カセットをもつHDAdCAR-dysの2種類のHDAdを作製した。この二つのHDAdを用いてmdxマウスの前脛骨筋にdystrophinを導入し、その導入効率や発現期間、筋病理変化の改善度などについて検討した。はじめに、HDAdLacz-dysを幼弱期に注入した筋において、dystrophinが正常骨格筋と同様に筋線維膜に一致して高率に発現しており、その発現が持続することによってmdxマウスの筋病理所見が改善することを確認した。さらに、HDAdCAR-dysを成熟期に繰り返し注入した筋で、一回注入した筋に比べて、dystrophin陽性の筋線維数が9倍増加し、24週齢時点で前脛骨筋全体の19%の筋線維にdystrophinの発現が認められた。また、それに伴いdystrophin結合蛋白の発現も回復していた。HDAdLacZ-dysを繰り返し注入した筋ではこのような増加はみられず、HDAdCAR-dysとHDAdLacZ-dysが注入された筋で惹起された細胞性免疫に明らかな違いは認められなかった。HDAdCAR-dysを成熟mdxマウス骨格筋に注入すること,によって、繰り返し注入時のdystrophin遺伝子の導入効率が改善したものと考えられた。また、この結果から、ある特定のアデノウイルスの血清型に対して既に感作されている宿主に対しても、それと同型由来のアデノウイルスベクターの投与が可能であることが示唆された。以上の結果は、Duchenne型筋ジストロフィーに対する新しい遺伝子治療法を提示しており、他の遺伝性筋疾患に対する遺伝子治療にも応用できる可能性があると考えられた。
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