2003 Fiscal Year Annual Research Report
Parkinson病における認知機能障害診断システムの樹立
Project/Area Number |
15590910
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
河村 満 昭和大学, 医学部, 教授 (20161375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 幸祐 昭和大学, 医学部, 助手 (90307033)
市川 博雄 昭和大学, 医学部, 講師 (70296953)
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Keywords | 手続き記憶 / 感情認知 / 表情認知 / 心的状態の推測 / 社会的意志決定 / 縦断的研究 / 事象関連電位 / 大脳基底核 |
Research Abstract |
先行研究より、PDにおいて、遂行機能および記憶(特に作動記憶、手続き記憶)に障害があることが広く知られている。加えて、手続き記憶の神経基盤として大脳基底核を中心とする皮質下の構造が注目されている。しかし、手続き記憶の縦断的研究や、感情認知や日常生活に即した社会的側面に関する研究はほとんどなされていない。また、パーキンソン病患者(以下PD)での認知機能研究は、認知機能に対する大脳基底核の関与を理解する上でも重要である。そこで、(1)手続き記憶の獲得と長期保持に関する縦断的研究、(2)感情認知に関する複数モダリティー間の比較研究、(3)事象関連電位を用いた、表情認知の神経処理過程に関する研究、(4)他者の心的状態の推測に関する研究、(5)社会的意思決定に関する研究を行い、PDにおける認知機能について包括的に検討した。その結果、PDでは(1)手続き記憶の新規獲得ならびに長期保持が障害されていること、(PDとは異なりアルツハイマー型痴呆患者では保持が可能であったことから)大脳基底核を含む皮質下構造は手続き記憶の形成と長期保持に重要であること、(2)恐怖および嫌悪の表情認知が障害されていること、一方、文章や音声による感情認知は保持されていること、(3)表情認知にあたり、健常者と異なり、PDでは運動前野および扁桃体の活動を認めず、これらの機能低下により表情認知障害が生じる可能性があること、(4)他者の心的状態を推測する機能が少なくとも部分的に障害されていること、(5)社会的な意思決定が障害されていること、および心的状態の推測と意思決定が関係することが示された。以上の研究より、PDでは、従来指摘されてきた遂行機能や記憶障害の他にも多様な認知機能障害が存在することが明らかとなった。加えて、感情障害や社会性に関しても認知機能面からの研究の発展が期待できる。
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[Publications] Midorikawa A.: "Musical Alexia for Rhythm Notation : A Discrepancy Between Pitch and Rhythm"Neurocase. 9. 232-238 (2003)
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[Publications] 緑川 晶: "脳梁無形成例における離断症候-鏡映描写課題による検討から-"高次脳機能研究. 23・1. 19-25 (2003)
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[Publications] 菅 弥生: "感情認知の脳機構:各種病変における検討"神経心理学. 19. 172-178 (2003)
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[Publications] 菅 弥生: "扁桃体病変例における感情認知"高次脳機能研究. 23・2. 160-167 (2003)
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[Publications] 川村 満: "眼と精神"医学書院. 265 (2003)