2004 Fiscal Year Annual Research Report
好中球が組織から上皮を経て管腔内へtransmigrateする機序の解明
Project/Area Number |
15591003
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
笹田 昌孝 京都大学, 医学部, 教授 (30144364)
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Keywords | NO / トランスミグレーション / 遊走 / 好中球 |
Research Abstract |
病原微生物の侵入が起こり得る部位は、主に組織である。従って生体を防御する観点から考えると、組織における防衛が最も重要と言える。生体防御の第一線を担う中心的な因子、好中球は、骨髄で産生され血中に出て、その後組織へと流出する。 病原微生物が組織に侵入すると、その部位に局在する好中球に加えて、流血中から大量の好中球が集積する。一方、平時では、傷害性の高い好中球が過度に活性化や動員されないよう抑制的に制御され、組織傷害を防いでいる。 このような流血中から組織への好中球の移動に、血管内皮をトランスミグレート(TG)する過程がある。この過程の制御における、種々のサイトカインや接着分子の重要性が明らかにされている。このほかNOの役割は、指摘されながらその意義や機序について充分に明らかでない。これを明らかにする目的で検討した結果、次の成績を得た。 (1)ヒト臍帯由来血管内皮細胞(HUVEC)をNO合成酵素阻害剤のL-NAME、L-NMMAで処理すると、好中球のTGは促進した。 (2)NOスカベンジャー存在下で、好中球TGは促進した。 (3)L-NAMEあるいはL-NMMA存在下でNOドナーを添加すると、好中球TGは抑制された。 以上より、HUVECが産生するNOが好中球に作用して、好中球TGを抑制すると考えられた。 (4)好中球とNOを産生するHUVECを共存させると、好中球内にNOの存在が確認された。 (5)NO合成阻害剤で処理したHUVECでは、好中球内NOは(4)に比べて量的に減少した。 (6)グアニルシクラーゼ(GC)活性化剤で処理すると、好中球TGは抑制された。 (7)好中球をGC阻害剤で処理すると、好中球TGは促進した。 以上より、NOは好中球内のGCに対する作用が少なくとも機序の一部と考えた。HUVECが常時産生するNOは、好中球に作用して過度のトランスミグレーションを抑制し、組織傷害を防いでいる。
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Research Products
(4 results)