2004 Fiscal Year Annual Research Report
全身性エリテマトーデス発症における遺伝子メチル化の影響
Project/Area Number |
15591064
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
関川 巌 順天堂大学, 医学部, 助教授 (80179332)
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / ヒト内在性レトロウイルス / DNAメチレーション / 自己免疫疾患 / 薬剤誘発ループス / 脱メチル化剤 |
Research Abstract |
全身性エリテマトーデス(SLE)の発症要因の一つとして、ヒト内在性レトロウイルス(HERV)の関与が指摘されている。HERVの一種であるHERVclone4-1は、ほとんど全ての日本人のゲノム遺伝子内に存在している。我々は従来から、健常者に比べSLE患者ではこのclone4-1の転写が著しく亢進していることを報告してきた。この転写亢進はSLEの病勢を反映する。さらに、SLE患者リンパ球ではHERV蛋白の翻訳が認められ、合成したHERVペプチドは、試験管内でSLE様のリンパ球機能異常を誘導すること、なども明らかにした。 一般にHERV転写は、健常者ではストップコドンの形成やDNAメチル化などエピジェネティックな統御システムによって転写・翻訳の抑制がされている。実際健常者リンパ球からも5AZA-Cなどの脱メチル化剤処理によってHERVの転写亢進を促すことができる。また、SLE様の免疫異常を誘発する薬剤(プロカインアミドなど)の多くは脱メチル化作用を有することが知られている。 こうした事実を背景として、本研究ではSLEでのHERV転写亢進におけるエピジェネティックの関与について検討した。この研究を通して、SLE患者では、DNAメチル化を統御する酵素DNMT-1の低下が認められ、これがHERV転写の亢進を規定していること、一方、DNAアセチル化などに関連した転写促進酵素の関与はみられないことなどを見出した。 SLEでのDNMT-1の低下は、単にHERV転写に関連するのみならず、抗原に対する過剰反応性などSLEでの免疫異常に広く関与している可能性があり、ステロイドなどによる加療によってこの低下は改善をみる。こうした点から、SLEをDNAメチル化異常による内因性抗原に対する過剰反応性疾患として捉えることができる。現在、性ホルモン、各種の薬剤のDNAメチル化に及ぼす影響を検討しており、SLEの発症性差や新たな治療戦略について検討中である。
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Research Products
(3 results)