2003 Fiscal Year Annual Research Report
乳児のボーダーライン先天性甲状腺機能低下症の治療がその後の甲状腺に及ぼす影響
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15591093
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
浅見 直 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (40018932)
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Keywords | 先天性甲状腺機能低下症 / 甲状腺ホルモン / ラット / ボーダーライン甲状腺機能低下症 / 残存内分泌機能 |
Research Abstract |
妊娠ラットを3頭購入し、これらを甲状腺を阻害するMMI投与群と対照群の2群に分けて飼育し、先天性甲状腺機能低下症(CH)ラットを作成した。生まれたラットは現在まだ離乳していないため一定週齢に達するまで飼育中である。またこれとは別に離乳直後の牡ラットを20頭購入し、甲状腺ホルモン(L-thyroxine,LT4)投与群と非投与群に分けて飼育中である。定期的に体重、飲水量、行動などを観察しているが、LT4投与群ではいずれも非投与群よりも多く、また動きが激しいなどLT4投与の影響が認められる。現在、血中甲状腺ホルモン測定を行うため体重のさらなる増加を待っている。これらにより少量のLT4投与でも新生児のエネルギー代謝を高めることがわかった。 臨床的にはCH新生児のもつ内分泌、代謝異常を電解質、水分代謝異常の有無とこれらに対する甲状腺ホルモン投与の影響を検討するためCH)新生児32例のNa handlingを検討した。血清Na濃度は139.1±1.5mEq/lで低Na血症は認めず対照群との有意差はなかった。血清NaおよびFENaと甲状腺ホルモンの間に関係はなかった。またL-T4投与2ヶ月後の血清Na濃度に有意の変化はなかったことから、CH乳児ではLT4投与によるNa、水分代謝への影響はないことを明らかにした。 今回のテーマであるボーダーライン先天性甲状腺機能低下症の発症には様々な要因が考えられるが、季節によるホルモン変動の影響も考えられる。これを検討するため当科を受診した新潟県内発症のほぼ全ての患者の季節別頻度を検討し、2月に季節別発症頻度に有意差があることを明らかにし、現在Acta Paediatricaへ投稿中である(Nakamizo M, Asami T, et al. Seasonality in the incidence of congenital hypothyroidism in Niigata, Japan.)。一方、既に治療を中止した本症患者の現在の甲状腺機能を調べるためアンケート調査を行っている。当科でまだ管理している症例で検討した成績では、乳児期から長期間甲状腺ホルモン投与を行ってもその後、甲状腺のホルモン分泌は充分得られており、特に問題はなさそうである。 研究費の交付決定が平成15年10月であったため、当初予定していた動物実験の進行がやや遅れてはいるが、CHラットも作成できたことより着実に進展している。臨床的には今まで不明であった先天性甲状腺機能低下症乳児のナトリウム代謝に変化がないことを明らかにし、さらにもう1編海外雑誌に論文を発表できたことより充分な成果を挙げたと思っている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Asami T, Uchiyama M: "Sodium handling in congenitally hypothyroid neonates"Acta Paediatrica. 93(1). 22-24 (2004)
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[Publications] Asami T, Tomisawa S, Uchiyama M: "Effect of oral camostat mesilate on hematuria and/or proteinuria in children"Pediatric Nephrology. 19(3). 13-316 (2004)