2004 Fiscal Year Annual Research Report
急性脳炎・脳症におけるグルタミン酸受容体自己抗体の役割の解明と治療法の研究
Project/Area Number |
15591151
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Research Institution | Shizuoka Institute of Epilepsy and Neurological Disorders |
Principal Investigator |
高橋 幸利 独立行政法人国立病院機構, 静岡てんかん・神経医療センター・臨床研究部, 部長 (70262764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 建樹 独立行政法人国立病院機構静岡てんかん, 神経医療センター・遺伝子生化学研究室, 室員 (40045513)
田中 正樹 独立行政法人国立病院機構静岡てんかん, 神経医療センター・薬理研究室, 室長 (90360809)
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Keywords | 急性脳炎 / 急性脳症 / 辺縁系脳炎 / グルタミン酸受容体 / 自己免疫 / てんかん / 知的障害 / 運動障害 |
Research Abstract |
1.研究方法・症例 我々は、全国の医療機関より依頼を受け、これまでに急性脳炎121例、急性脳症6例の血清・髄液(約500検体)において、GluRε2(ε2)、GluRδ2(δ2)自己抗体を測定してきた。方法は、ε2、δ2を遺伝子組換えによりNIH3T3細胞内にて合成させ、そのホモジネートを抗原として自己抗体(IgG、IgM分画)を判定する方法(Y Takahashi, et al. Neurology 2003)を用いた。 2.結果 急性脳炎・脳症と診断され髄液を検索し得た43例を、神経症状発症様式から限局脳炎(病初期に意識障害がほとんどなく、精神症状、幻覚、単発のけいれん発作などで発症するもの)と、全脳炎(病初期より意識障害が著明なもの)に分類した。 限局性脳炎では血清中のGluRε2抗体は約4分の3に見られるが、予後との関連は見られなかった。髄液中のGluRε2抗体は20例中16例で陽性で予後と有意な関連は見られなかった。全脳炎では、血清中のGluRε2抗体は8割の症例に出現し、予後との関連はなかった。髄液中のGhRε2抗体は19例中10例で認められ、予後との有意な関連があり(p=0.03)、髄液GluRε2抗体が陽性であると予後が不良となる傾向が見られた。 急性脳炎には、病初期にGluRε2抗体が作られその後抗体価が低下すると思われる一群と、回復期から慢性期にGluRε2抗体ができてくる一群が存在することが分かった。前者の病初期にGluRε2抗体が作られる限局性脳炎では、発病にこの自己抗体が関与している可能性があり、後者の回復期以降にGluRε2抗体が作られる全脳炎では、後遺障害にこの自己抗体が関与している可能性がある。 小児に多い全脳炎型の髄液GluRε2自己抗体は、後遺障害の中の知的障害(P=0.03)、てんかん(p<0.01)の出現と有意な関連があり、運動障害とは有意な関連が見られなかった。髄液GluRε2抗体の形成に関連する因子としては、入院治療開始後の痙攣重積が有意であった(P=0.023)。
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Research Products
(7 results)