2004 Fiscal Year Annual Research Report
色素細胞の肝細胞増殖因子シグナル伝達系におけるプロテインキナーゼCβ分子種の役割
Project/Area Number |
15591177
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡 昌宏 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (30252761)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 秀幸 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 助教授 (80252758)
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Keywords | 肝細胞増殖因子 / 悪性黒色腫 / ホスファチジルイノシトール3キナーゼ / プロテインキナーゼC / 燐酸化 / Gab1 |
Research Abstract |
色素細胞における肝細胞増殖因子(HGF)によるシグナル伝達経路をホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3-K)の活性化に焦点を絞り解析した。PI3-Kは85kDの調節サブユニット(p85)と110kDの触媒サブユニット(p110)からなり、その活性化の結果下流のさまざまな重要因子を活性化させる多機能性酵素で、癌細胞の浸潤・転移にも関与するとされているため、PI3-K活性化は黒色腫細胞の動態に大きく影響すると思われる。実験の結果、正常色素細胞、悪性黒色腫細胞ともにHGF刺激によりHGF受容体であるcMetは活性化されるにもかかわらず、PI3-Kの活性化は黒色腫細胞においてのみ起こることを見い出した。さらに、HGF刺激の際、黒色腫細胞ではp85がGab1(HGFのシグナル伝達に必要な多くの分子をc-Metに集合させる働きをするc-Metのアダプター蛋白)と結合するのに対し、正常色素細胞ではこの結合が起こらないことを確認した。Gab1にはアミノ酸配列上、プロテインキナーゼC(PKC)によって燐酸化されうる部位がいくつか存在することが明らかとなっていることから、PKCによるGab1の燐酸化がGab1の機能に影響を与える可能性を考え、各PKC分子種の遺伝子導入実験を行ったところ、悪性黒色腫細胞で発現欠損がよくみられるβ分子種の細胞内導入は、HGF刺激によるPI3-K活性化を顕著に抑制し、かつGab1の燐酸化状態が正常色素細胞の状態と近くなることを見い出した。以上より、PKCβ分子種は正常色素細胞においてはGab1を燐酸化することによりHGF刺激によるPI3-K活性化を抑制しているが、悪性黒色腫細胞では発現欠損が起こることにより、その抑制が解除され、HGF刺激によるPI3-K活性化が起こることが示唆された。
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Research Products
(4 results)