2003 Fiscal Year Annual Research Report
Basigin(CD147)の悪性黒色腫の浸潤・転移に果たす役割に関する研究
Project/Area Number |
15591185
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
金蔵 拓郎 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (70177509)
|
Keywords | Basigin / 悪性黒色腫 / 転移 |
Research Abstract |
ベイシジンは免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通糖蛋白質で、線維芽細胞におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現を誘導することが報告され、腫瘍の浸潤と転移に関与する可能性が示された。平成15年度にはベイシジンの発現と悪性黒色腫の転移との関連を検討した。臨床的に転移のなかった18例と転移の確認された10例について腫瘍細胞におけるベイシジンの発現を免疫組織化学的に観察した。陽性細胞数が5%以下を陰性、5〜50%を陽性、50%以上を強陽性と判定した。転移のなかった18例中11例は陰性でこの群では強陽性を示す症例はなかった。転移のあった10例中6例は強陽性を示しこの群では陰性例はなかった。この結果からベイシジンの発現と悪性黒色腫の転移には相関があることが明らかとなった。そこでベイシジンの発現と、癌の転移に重要なMMPの発現を比較検討した。ベイシジン陽性で転移のある黒色腫ではMMPが発現していたが、興味ある所見としてベイシジン陽性の腫瘍巣周囲の線維芽細胞もMMPを発現していた。そこで、腫瘍細胞と線維芽細胞におけるベイシジンとMMPの発現について統計学的解析を行なった。メラノーマ細胞におけるMMPの発現率は転移群で有意に高かったが、ベイシジンの発現とは有意の相関はなかった。一方、線維芽細胞におけるMMPの発現は転移の有無、ベイシジンの発現の両者と有意の相関が見られた。即ち、MMPの発現は転移群で高率に観察されたが、メラノーマ細胞ではベイシジンの発現とは相関することなくMMPが産生されるのに対して、線維芽細胞ではベイシジンを発現しているメラノーマの群でMMPの発現が高度であった。これらの結果から、ベイシジンは黒色腫細胞上に発現し腫瘍巣周囲の線維芽細胞におけるMMPの発現を誘導することによって浸潤・転移に関与している可能性が示唆された。
|