Research Abstract |
ディジタル胸部単純写真において,正常構造を除去し,病巣陰影だけを強調することのできる類似差分画像法を開発することが,本研究の目的である.類似差分画像法とは,同一患者の過去画像が無くても,今回撮影された対象画像から類似する他人の正常画像を差分し,病巣陰影だけを強調する手法である.平成15年度は類似差分画像法の基本的なアルゴリズムを作成し,また,Computed Radiography (CR)システムで撮影された正常胸部単純写真8,766枚を含むデータベースを構築した.さらに,平成16年度には次のような研究成果が得られた。 1.対象症例と他人のオリジナル画像,および肋骨エッジを強調した画像の相互相関係数を,胸部単純写真の類似度を示す物理的尺度として用いることの有用性が示された。 2.正常胸部単純写真を含む大規模データベースから,ターゲット画像と類似する他人の正常画像を選ぶとき,計算時間を短縮させるため,まず,同じ性別を選び,さらに,肺野の幅と高さが同程度の画像に絞り込んでから類似差分画像を作成する方法を実施した。 3.類似差分画像の肺野内に設定した長方形関心領域内のヒストグラムを分析した結果,アーチファクトが増大するほどヒストグラムの幅が広くなることが分り,ヒストグラム分析はアーチファクトの評価に有効であることが分かった。 4.結節状陰影を有する症例に対して類似差分画像法を適用した結果,データベースに含まれる画像のうち類似度が10番目以内の他人との類似差分画像はアーチファクトが比較的少なく,結節状陰影の検出において臨床的に有用であることが示唆された。
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