2003 Fiscal Year Annual Research Report
肝移植虚血再灌流傷害における転写因子NF-κBの機能解析とその応用による傷害抑制
Project/Area Number |
15591357
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
高橋 禎人 北里大学, 医学部, 助手 (80245406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 光史 北里大学, 医学部, 助教授 (40118815)
高橋 毅 北里大学, 医学部, 講師 (70245405)
鹿取 正道 北里大学, 医学部, 助手 (40255344)
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Keywords | NF-κB / 肝虚血再灌流傷害 / IκB |
Research Abstract |
【目的】肝虚血再灌流傷害は移植肝の臓器viability低下の主要因であり,炎症性geneの誘導からapoptosisやnecrosisが惹起され,graft機能不全を引き起こす。一方,NF-κB(Nuclear transcriptional factor-κB)は,炎症性サイトカイン,iNOSなどのgeneの転写因子である。我々はこれまでラット肝移植において,Adenovirus vector(Ad)をドナー肝の門脈・肝動脈からex-vivoで注入・クランプ・保存(clamp technique : CT)によって移植後6時間から,またドナーへのAdの静脈内投与(pretreatment : PT)によってさらに早期から,目的gene発現を報告した。これら2種類の方法を応用しAdIκB(Inhibit or of κB)を導入し,NF-κBの虚血再灌流傷害における意義・作用の検討を目標とした。 【方法と結果】Control(Adによる遺伝子導入なし)となる18時間保存・移植後の凍結肝組織を経時的(再灌流後1,3,6,12,24,48時間)に以下の項目をそれぞれ検討した。 1 NF-κBの経時的変化:以前の報告と同様の1-3時間と6時間に二峰性のピークを示した。 2 サイトカインの経時的変化:TNF-αは1-3時間にピークを認め,その後漸減した。 3 アポトーシスの経時的変化:TUNELキットにて1-3,24時間に陽性細胞が多く出現した。 4 ネクローシスの経時的変化:12-24時間に壊死組織を認めた。 5 肝逸脱酵素(GOT/GPT)の経時的変化:12-24時間にピークを認めた。 平行してAdIκBの遺伝子導入を同様のラット肝移植モデルで検討した。 1 AdIκBタンパク質の発現の経時的変化:CTでは6時間以降に発現を認めた。 2 AdIκBタンパク質の発現の経時的変化:PTでは1時間以降に発現を認めた。 【平成15年度のまとめ】 NF-κBの発現とサイトカイン特にTNF-αの経時的変化の結果から,肝虚血再灌流傷害においてNF-κBの1stピークが炎症性サイトカインの発現に関与していることが示唆された。その結果,この発現をコントロールすることで傷害抑制の可能性があり,数例の基礎実験からはAdIκBのPTによって1stピークが抑制されることが確認できている。現在,nを増やしつつ,アポトーシス・ネクローシスへの影響,肝逸脱酵素などを経時的に検討する予定である。
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