2004 Fiscal Year Annual Research Report
消化器癌に対する鏡視下手術の妥当性に関する分子遺伝学的検討
Project/Area Number |
15591411
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
宇都宮 徹 九州大学, 大学病院, 講師 (30304801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 文明 九州大学, 大学病院, 助手 (30332836)
森 正樹 九州大学, 生体防衛医学研究所, 教授 (70190999)
吉武 慎一郎 九州大学, 大学病院, 助手 (80315142)
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Keywords | 鏡視下手術 / 大腸癌 / サイトカイン / DNAマイクロアレイ / 遺伝子発現 / マウス |
Research Abstract |
目的:われわれはマウスモデルを用いて、気腹群が開腹群より腫瘍増殖が緩徐であり麻酔のみ群と同等であることを示した。そこで分子機構を解明すべく、DNAマイクロアレイ解析を行った。 方法:1.マウス皮下にcolon26細胞を移植し、開腹、気腹群で術後腫瘍を計測。 2.マイクロアレイ法により各臓器と腫瘍の遺伝子発現を検討。 3.Real-time PCRによる確認。 4.マウス血清および腫瘍においてpick upした遺伝子の蛋白レベルでの変化をWestern blotで確認。 結果:1.開腹、気腹、麻酔のみ群で術後皮下腫瘍を観察し、開腹群で有意に腫瘍の増大を認め、特に術後2日目までの間が有意に腫瘍の増大率が大きい事が分かった(p=0.02)。 2.分子機構を解明するため、DNAマイクロアレイ法を用いた肝臓、脾臓、肺および腫瘍での遺伝子発現プロファイルの検討し、開腹群で低発現する遺伝子としてTIMP3、高発現する遺伝子としてPI3 kinase p110α catalytic subunit(Pik3ca)とPik3r1を同定した。 3.発現変化はreal-time PCRでも確認できた。Agilent社製のDNAマイクロアレイ解析の結果、16遺伝子を抽出し3臓器+腫瘍において7 time point + normalの検体のReal-time PCRを行った。(臓器によってその発現パターンがアレイ解析結果と一致するものとそうで無いものがあった。) 4.TIMP3は、MMPファミリーを非可逆的にinactivateする。OverexpressionによってFas-associated death domain-dependent mechanismでのアポトーシスを来す(JBC,2002)。肝臓、腫瘍、また分泌蛋白であるため血清のWestern blotで術後1日目にLASおよびOPENの群で蛋白の発現が低下し、術後7日目までその影響が持続することがわかった。 考察:Pik3caおよびPik3r1は癌での発現亢進が報告されており、Pik3caはPTENの存在に関わらずp53によってその発現が抑制される事が報告されている(Genes Dev 2002)。また、PI3 kinaseの活性化はSkp2の発現を亢進させるという報告がある。Skp2の発現をReal time PCRで確認したところ、術後気腹群と開腹群で腫瘍部での発現が亢進しており、p27の蛋白発現は気腹群と開腹群で低下していた。以上のことより、手術侵襲により体内のTIMP3は低下しMMPファミリーの活性化を引き起こし、癌細胞の浸潤能の亢進、アポトーシス抵抗性を引き起こした。一方、PI3-kinaseの発現亢進とともに、Skp2の発現が亢進しp27蛋白の分解が亢進することにより癌細胞増殖が引き起こされる可能性が考えられた。
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Research Products
(6 results)