2004 Fiscal Year Annual Research Report
エリスロポイエチンの脳保護効果.遺伝子改変マウスを用いての個体レベルでの検証
Project/Area Number |
15591508
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷中 清之 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (10312307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 陽美 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (80323301)
永瀬 宗重 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助教授 (10189128)
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Keywords | cerebral ischemia / cerebral infarction / erythropoietin |
Research Abstract |
【背景および目的】体内の生理活性物質であるエリスロポイエチン(Epo)は赤血球造血に必須のサイトカインである。造血とは一見関係のない中枢神経系にもEpo及びそのレセプター(EpoR)が発現しているが、その役割は明らかではなかった。本研究では、遺伝子改変マウスを用いて個体レベルでの検証を行うことにより、Epoの中枢神経系における薬理的効果について解明する事を目的とした。 【方法】今回用いる遺伝子改変マウスはEpoRノックアウトマウスを血球特異的に発現するEpoRcDNAでレスキューしたものである。EpoRノックアウトマウスは成人型(definitive)造血ができないために胎生致死になるが、本研究で用いるマウスは血球特異的に発現するGATA-1プロモーターを使って血液系だけにEpoRを発現させたものである。このマウスは血球系にのみEpoRを発現し、神経系にはEpoRが発現していないことを確認した。マウスの虚血モデルに対し、脳虚血後の脳梗塞面積・アポトーシスの程度・VEGF(vascular endothelial growth factor)の発現を染色法により測定した。まず局所脳虚血モデルにおいて測定し、ついで全脳脳虚血モデルにおいて評価を行った。 【結果】局所脳虚血モデルにおいては、虚血導入マウスの死亡率が高く、統計的検討を行うには至らなかった。一方、全脳脳虚血マウスでは、死亡率は高くないものの、従来の報告と同程度の虚血時間では比較群においてもアポトーシスの発現は様々で、統計的検討には至らなかった。しかしながら、個別には遺伝子改変マウスで、脳梗塞巣の縮小・アポトーシス過剰発現・VEGF発現低下の認められるものもあった。 【考察】エリスロポイエチンには脳保護効果があり、その機序にはアポトーシス・VEGFを介する可能性が示唆された。しかしながら統計的検討には達していないため、安定した確実な虚血モデルの作成を念頭に更に研究を継続すべきと考えている。
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