2003 Fiscal Year Annual Research Report
内頸動脈閉塞性病変に起因する虚血性網膜症の予防と対策
Project/Area Number |
15591539
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
川口 正一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (60244703)
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Keywords | 内頚動脈閉塞症 / 内頚動脈狭窄症 / バイパス術 / 虚血性網膜症 / 眼動脈ドプラ血流検査 |
Research Abstract |
内頸動脈閉塞性病変に起因する虚血性網膜症症例における、閉塞性病変の部位と程度の検討では、内頸動脈起始部での閉塞症が最も多く、起始部での70%以上の狭窄症がそれに続いた。内頸動脈海綿静脈洞部の狭窄症で、虚血性網膜症を呈した症例はなかった。眼動脈ドプラ血流検査による眼循環の評価では、内頸動脈閉塞性病変の中でも眼動脈の血流方向が逆流している症例で虚血性網膜症の発症が多かった。眼動脈の血流方向が順流の症例でも、眼動脈血流波形が異常(収縮期最大血流速度が低い症例、ピークまでの時間が長い症例)の場合、虚血性網膜症が発症する症例が存在した。眼科的評価では、内頸動脈閉塞性病変による虚血性網膜症を発症した側の徐々に進行する視力低下と眼底血圧の低下、腕網膜時間の延長を認め、眼底所見は慢性虚血性変化を患側で認めた。 今回の研究から、内頸動脈閉塞性病変で内頸動脈起始部閉塞症や70%以上の狭窄症で、向側の虚血性網膜症を発症する可能性が示唆された。中でも、眼動脈の血流方向が逆流の症例で特にその可能性が高かった。逆に、内頸動脈閉塞症や高度狭窄症であっても、眼動脈の血流方向が順流の症例では虚血性網膜症の発症の可能性は低かった。また、内頸動脈閉塞症や高度狭窄症例では、患者自身が自覚しておらず眼科的な検査所見で初めて診断された症例や、未だ発症に至ってない症例もあり、早期診断や発症予防の重要性と可能性が今回の研究から示唆された。 今後は、内頸動脈閉塞症や高度狭窄症例による虚血性網膜症の発症予防の具体的な方法を明らかにすることと、虚血性網膜症を発症した症例に対する眼循環の改善を念頭においた治療法とその効果を明らかにする。
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Research Products
(2 results)