2003 Fiscal Year Annual Research Report
慢性圧迫性脊髄障害モデルにおいて発現に変化を認めた遺伝子群の機能解析
Project/Area Number |
15591563
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大河 昭彦 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助手 (30312945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 正志 千葉大学, 医学部附属病院, 助手 (50281712)
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Keywords | cDNAマイクロアレイ / 慢性圧迫性脊髄障害 |
Research Abstract |
目的:慢性圧迫性脊髄障害は、椎間板ヘルニア・変形性脊椎症・脊柱靱帯骨化症などにより四肢の麻痺・知覚障害などの脊髄障害を生じるものである。近年、画像診断の進歩、手術的療法の確立などによって、一定の治療成績が得られるようになっているが、一度生じた脊髄障害は完全に回復することは少なく、その原因として慢性圧迫によって不可逆的な障害が生じていると考えられる。しかしながら慢性圧迫による脊髄障害の病態については不明な点が多く、充分な研究がなされていない。本研究の目的は慢性圧迫性障害を生じた脊髄組織における遺伝子の発現についてcDNAマイクロアレイを用いて解析し、慢性圧迫性脊髄障害の病態を解明することである。 方法:対象に靱帯骨化の自然発症モデルマウスであるttw mouseを用いた。ttw mouseは後環軸膜の骨化により後外側からの脊髄の著明な圧迫をきたし、18-20週齢でほぼ全例に脊髄障害をきたすことが知られている。脊髄圧迫の生じた23週齢ttw mouse(ttw/ttw)を慢性圧迫群、脊髄圧迫の生じない野生型23週齢ttw mouse(+/+)をコントロール群とした。両群とも全身麻酔下に頸髄圧迫部を摘出し、TRIZOL法にてtotal RNAを分離した。各群をCy3、Cy5でそれぞれラベルし、プローブを作成した。これらを、マウス神経幹細胞の発現遺伝子および脳由来の遺伝子4851種をターゲットとして配置したin-house cDNAマイクロアレイを用いて、同一スライド上で競合的にハイブリダイズさせた。色素を入れ替えての確認もおこない、2回の解析で発現量の2倍以上異なる遺伝子を検出した。cDNAマイクロアレイ解析にて発現に変化を認めた候補遺伝子について、半定量的RT-PCRを用いて発現の変化を確認した。本実験で用いたプライマーで得られたPCR産物についてはシークエンスをおこない、候補遺伝子の配列と正しいことを確認した。 結果:cDNAマイクロアレイによる解析の結果、慢性圧迫性脊髄において1遺伝子に2倍以上の発現の上昇を、17遺伝子に2倍以上の発現の低下を認めた。これら18の候補遺伝子のうち、17遺伝子の発現について半定量的RT-PCRにて確認したところ、発現の低下した16遺伝子について、cDNAマイクロアレイと半定量的RT-PCRの結果が一致した。 考察:慢性圧迫性脊髄障害の病態を解析するため、cDNAマイクロアレイ解析をおこなった。その結果、神経系の細胞接着因子の一つであるNCAM L1、SODの一種であるSOD3などに減少を認めた。現在、これらの候補遺伝子について解析中である。 結論:cDNAマイクロアレイを用いて慢性圧迫脊髄における発現遺伝子を解析し、発現に2倍以上の減少を認めた17遺伝子を同定した。現在、これらの遺伝子の脊髄組織における発現の局在について解析を進めており、今後これらの遺伝子について検討していく予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Koshizuka S, Okawa A, Yamazaki M 他: "Transplanted hematopoietic stem cells from bone marrow differentiate into neural lineage cells and promote functional recovery after spinal injury in mice"Journal of Neuropathology and Experimental Neurology. 63(1). 64-72 (2004)
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[Publications] Yonghui Fu, Yainazaki M 他: "Spinal root avulsion-induced upregulation of osteopontin expression in the adult rat spinal cord"Acta Neuropathologica. 107. 8-16 (2004)
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[Publications] Hashimoto M, Yamazaki M 他: "Regulation of semaphorin 3A expression in neurons of the rat spinal cord and cerebral cortex after transection injury"Acta Neuropathologica (Berl). 107(3). 250-256 (2004)
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[Publications] Hashimoto M, Yamazaki M 他: "Upregulation of osteopontin expression in rat spinal cord microglia after traumatic injury"Journal of Neurotrauma. 20(3). 287-296 (2003)
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[Publications] Yamazaki M 他: "Fenestration of vertebral artery at the craniovertebral junction in Down's syndrome : A case report"Spine. (in press).
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[Publications] Koda M, Yamazaki M 他: "Up-regulation of macrophage migration-inhibitory factor expression after compression-induced spinal cord injury in rats"Acta Neuropathologica. (in press).