2004 Fiscal Year Annual Research Report
亜酸化窒素を用いたノルエピネフリン作動性下行性抑制系の作用機序の探求
Project/Area Number |
15591613
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
橋本 聡一 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (40281810)
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Keywords | 下行性抑制系 / 亜酸化窒素 / c-Fos / 青斑核 / GABA / コルチコトロピン放出因子 |
Research Abstract |
亜酸化窒素は脳幹部(橋)のノルエピネフリン産生ニューロンを賦活し,同時に脊髄でノルエピネフリンを放出し,アドレナリン作動性α1受容体を介して,GABA作動性ニューロンを賦活することが知られている。今回は,(1)亜酸化窒素負荷により脊髄で放出されるノルエピネフリンは,確かに橋のノルエピネフリン産生ニューロン由来のものなのか,また,(2)どのような機序で亜酸化窒素が橋のノルエピネフリン産生ニューロンを賦活するかについて研究した。 ラットの脳幹部ノルエピネフリン産生ニューロンを選択的に破壊するために,オスのFischerラットの側脳室内にanti-dopamine _-hydroxylase-saporin(D_H-saporin)を投与した。対照群(ノルエピネフリン産生ニューロンを破壊しない群)には,側脳室内に生理的食塩水を投与した。側脳室内投与の14日後に75%亜酸化窒素と25%酸素の混合ガスに90分間暴露し,その後パラホルムアルデヒドで固定した。免疫組織染色により腰髄のc-Fosを染色した。腰髄のc-Fos陽性細胞の数は,脳幹部ノルエピネフリン産生ニューロンを破壊したラットでは増加しなかったが,対照群では増加した。亜酸化窒素負荷により脊髄で増加するc-Fos陽性細胞は,α1受容体を持つGABA作動性ニューロンであることが知られているので,今回の研究から,亜酸化窒素による脊髄でのGABA作動性ニューロンの賦活には,脳幹部のノルエピネフリン産生ニューロンが必要であることが示された。 また,亜酸化窒素が橋のノルエピネフリン産生ニューロンを賦活する機序を明らかにするために,オスのFischerラットの側脳室内に,コルチコトロピン放出因子受容体の拮抗薬であるalpha-helical CRH,または生理食塩水(対照群)を投与し,その後,75%亜酸化窒素を90分間負荷した。対照群では青斑核などのノルエピネフリン産生ニューロンでc-Fosの発現が見られたが,alpha-helical CRHを投与した群ではc-Fosの発現は見られなかった。脳室内にμオピオイド受容体作動薬のDAMGO投与して,その後,75%亜酸化窒素を90分間負荷した場合は,青斑核などのノルエピネフリン産生ニューロンでc-Fosの発現は抑制されなかった。結論としては,亜酸化窒素は脳幹部でコルチコトロピン放出因子受容体を介して,ノルエピネフリン産生ニューロンを賦活することが明らかとなった。オピオイド受容体作動薬は,亜酸化窒素によるノルエピネフリン産生ニューロンの賦活を抑制することが予想されたが,実際は抑制しなかった。
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