2004 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄虚血後の遅発性運動神経細胞死におけるミトコンドリア機能不全の関与に関する研究
Project/Area Number |
15591633
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松本 美志也 山口大学, 医学部, 助教授 (60243664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 志朗 山口大学, 医学部附属病院, 助手 (70322245)
飯田 靖彦 山口大学, 医学部附属病院, 助手 (90304485)
坂部 武史 山口大学, 医学部, 教授 (40035225)
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Keywords | 脊髄虚血 / ミトコンドリア / シクロスポリンA / 遅発性運動神経障害 / 家兎 |
Research Abstract |
虚血による神経細胞死にミトコンドリアの機能不全が関与している可能性が注目されている。シクロスポリンA(CsA)はカルシニューリン抑制とミトコンドリア内膜透過性亢進抑制作用を有し、虚血時にミトコンドリア機能を保持する効果が期待されている。しかし、CsAには血液脳・脊髄関門の透過性が乏しいことと、高血糖を引き起こすなどの問題点がある。本研究では、脊髄微小損傷によりCsAの血液脳・脊髄関門の透過性促進を図り、高血糖に対してはインスリンを投与することで、一過性脊髄虚血に対するCsAの効果を検討した。【方法】30羽の家兎をA群(脊髄微小損傷の偽手術+溶媒)、B群(脊髄微小損傷+溶媒)、C群(脊髄微小損傷+CsA)、D群(脊髄微小損傷+溶媒+インスリン)、E群(脊髄微小損傷+CsA+インスリン)の5群に分けた(各n=6)。脊髄微小損傷群では虚血4日前に腰髄を後方より2椎間(L4-5、L5-6)露出し、外径0.35mmのsteel needleで深さ2mm、左右1ヶ所(計4ヶ所)穿刺した。この処置による運動障害は認められなかった。溶媒あるいはCsA(10mg/kg)は虚血前2日間(1日1回)と虚血時(計3回)に静脈内投与した。気管挿管・人工呼吸下(イソフルラン麻酔)に、経後腹膜的に左腎動脈直下の腹部大動脈を13分間遮断することで脊髄虚血を作成した。再灌流24、48、72、96時間後の後肢運動機能(4:正常、3:跳躍可能だが正常ではない、2:後肢はよく動くが跳躍不可、1:後肢がわずかに動く、0:後肢の完全麻痺)を評価し、96時間後の評価後に脊髄を灌流固定してHE染色を行い、腰部膨大部腹側の正常神経細胞数を計測した。【結果】虚血前血糖値(mean±SD)はA-E群で順に、163±19、179±37、237±71、120±21、115±15mg/dlであり、D群とE群がA-C群に比較して有意に血糖が低値であった。再灌流96時間後ではA-C群の全ての家兎が跳躍できなかったが、D群では4羽が正常、E群では全て正常であった。腰部脊髄腹側の正常神経細胞数はA-E群で順に、29±13、35±9、33±8、67±28、73±8であり、D群はA群に対し、E群はA群とB群に対し、有意に正常神経細胞が多かった。【考察】一過性脊髄虚血モデルでは脊髄微小損傷によるpreconditioning効果はなかった。微小損傷+CsAでは全く保護効果がなく、微小損傷+インスリンでは中等度の保護効果が認められた。一方、微小損傷+CsA+インスリンでは強い保護効果が認められた。このことは、CsAとインスリンに何らかの相乗作用がある可能性が考えられ、例えば、インスリンがCsAの脊髄への移行を促進する作用などの検討が必要と考えられる。
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