2004 Fiscal Year Annual Research Report
脳低温療法による内在性神経幹細胞活性化の基礎的研究
Project/Area Number |
15591641
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
矢野 敏之 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (50253729)
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Keywords | hypothermia / neural stem cell / subventricular zone / focal cerebral ischemia |
Research Abstract |
平成15年度に構築したラット側頭筋温をターゲット温とした加温冷却システムを用いて、脳室下帯の神経幹細胞にfocal cerebral ischemiaとhypothermiaが及ぼす影響を調査した。8〜9週齢の雄性Wistarラットを対象とし、A群:ischemia + hypothermia、B群:ischemia + normothermia、C群:hypothermia aloneの3群に分けた。ラットをイソフルランと亜酸化窒素で麻酔し、気管挿管後に人工呼吸を開始、左側脳室に脳室下帯細胞を標識する色素、DiIを注入した。右中大脳動脈(MCA)領域の脳血流、右側頭筋および直腸の体温を連続的に測定した。A群では、側頭筋温を37.5℃に維持し、先端部分をシリコンで被覆した4-0ナイロン糸で右MCAを2時間閉塞した。脳血流が前値の30%未満に低下しなかったラットは除外した。MCA閉塞直後から冷却を開始し、32.5℃に6時間維持した。その後37.5℃へ復温し、麻酔から覚醒させた。これに対し、B群では冷却を行わず、C群では虚血を負荷しなかった。7日後に神経学的評価を行い、BrdUを投与後に脳を摘出し、凍結切片を作製、種々の抗体で蛍光免疫染色した。C群は神経学的に正常で、A群は正常または軽微な障害のみ、B群は軽度から中等度の障害であった。B群ではMCA領域の皮質および皮質下に、A群では同領域の皮質下のみに梗塞をみとめ、皮質下梗塞量はA群<B群であった。B群では、DiIで標識された細胞が側脳室上衣および脳室下帯を起源に皮質下梗塞巣の境界領域へ向かって移動していたが、A群ではその傾向はほとんどなかった。梗塞領域では、BrdU、PCNA、Ki-67を発現する細胞が多数認められ、それらは同時にGFAPを発現していたが、NeuN、βIII-tubulin、O4には陰性であった。側脳室壁と脳室下帯にはnestin陽性細胞を認めた。また、脳室下帯からrostral migratory streamと梗塞領域へ向かう細胞の多くはdoublecortinを発現していた。以上の結果から、MCA閉塞から6時間の脳低温療法により機能的および組織学的に神経傷害が改善されたけれども、脳室下帯の神経幹細胞のそれらへの寄与は明らかとはならなかった。
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